『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』

ドイツには、日本、韓国、中国からの留学生も多く、多くのアジア人音楽家がプロとして活躍しています。

なぜ、ドイツは、日本の音楽家が留学、活躍できるのでしょうか?

それは、ドイツ人は誰に対しても平等に接して、親切にすることができるからだそうです。

 

ドイツといえば、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン 、ヘンデルなど、多くの音楽家の生誕地。

多くの国立、州立の歌劇場に専属のオーケストラがあって、バレエ団もたくさんあります。

 

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

今回は、『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』という本を取り上げます。

ドイツを知ることで、日本にいて自分では気づけないことに、気づけます。

著者について

著者はキューリング恵美子さん。大学卒業後、会社勤務を経てドイツ人と結婚、30代でミュンヘン近郊に移住。

異文化の中で子育てに奮闘し、バレエ留学生のコーディネイトやライフアドバイザーとしても活躍。

ドイツ在住20年超の日本人女性の視点から、ドイツと日本の違いをみます。

『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』キューリング恵美子 小学館2021

 

「自分自身に満足しているか」という質問に対して、日本45,1%、ドイツ81,8%

「自分には長所がある」という質問では、日本人は45%で7ヶ国中最低、ドイツ人は90%以上でトップ。

ドイツ人は、ありのままの自分に満足し自己肯定感が高く、確固たる自分軸を持って生きています。

 

著者は、夫に「ベビーシッターを雇ったわけじゃない」と言われ、理解し合えず、長年苦しみました。

「良い妻」「良い母」だと認めたもらいたいと、思いつめていたことに気づいたそうです。

 

ステージⅢの癌で苦しんだのち、自分が他人の目が気にして「他人の人生」を生きていたことにも。

最後に「あなたはあなたのままでいいのです」と締めくくっています。

ドイツ人は「他人の目」を気にしない

女性ノーメイク、男性ノースーツ

通常、スーツを着てネクタイを締めて通勤している人は見かけません。 

「結婚式に行くときはきれいにしょうかなと思うからメイクするけど、普段はする必要もない」

派手なメイクをしている人や、オシャレで個性的なファッションをみかけることもあるが、常識や仕事のためではない。

 

公務員も全然ラフで、男性も女性も普段着で仕事をしていて、タトゥーやピアスをしている人もいます。

普段着とは、オシャレ着でもビジネススタイルでもない、家にいるときの服装ということです。

 

ドイツの女性は、まわりが自分をどう見ているかは問題ではない。

流行を追わない。着飾るよりも、着心地や機能性を重視している。

自分が他人にどう映っているのか、気にしないドイツ人の生き方が表れています。

裸を見せても平気

ドイツ人はサウナ好きが多く、多くは男女混浴で、バスタオルや手で体を隠す人はいません。

ご主人いわく、「人間のつくりは同じなのに、隠す必要なんてないだろう」

 

ドイツは、裸で日光浴や海水浴、森林浴やスポーツを楽しむ文化があります。

こうした文化にも、「他人の目を気にしない」「ありのままの自分を大切にする」生き方が表れているようです。

ドイツ人は休みを大事にする

短時間労働で経済大国

ドイツの労働生産性は日本の1.5倍。

日本人の年間総労働時間は1710時間、サービス残業を含めると3000時間以上の人は少なくない。

ドイツは1356時間です。

 

労働生産性(1人1時間に生み出すGDP)は、日本人47.5ドル、ドイツ人69.8ドル。

この生産性の高さは、経済成長や景気のよさにつながっている。

財政黒字で、新規国債は発行不要。

「休暇」のために働く

1年間の「休暇計画」を会社に提出し、有給は100%とる。

1年のうち通常2〜3週間の長期休暇をとり、旅行にお金を費やす。

30日の休暇手当は、月給の約半額の休暇手当がもらえる。

 

ゆっくり滞在する。メールを一切チェックしない、携帯電話が鳴ることもない。

乳幼児がいても普通に過ごせる施設や、預かってくれたり、若いアルバイトが子供の面倒を見てくれる。

 

毎年、長期休暇や短期休暇をとり、国内外のバカンスを楽しんでいます。

本当に休暇でリフレッシュするためには、頭の中から仕事を追い出す。

仕事に戻ったとき、新鮮な気持ちではつらつとでき、頭の回転も早くなり、集中力もぐんとアップするはず。

残業、職場の付き合い、なし

法律で労働時間が厳しく規制されている。

多くはフレックスタイムで、ピタッと仕事を終える。無駄な会議は嫌い。

 

就業前のカフェタイムでコミュニケーションをとり、就業後に飲みに行くような付き合いはない。

仕事の後は、地域の文化センターで汗を流したり、教会でコーラスなどを楽しんだりする。

休日は買い物よりアウトドア

駅や空港、飲食店以外は、日祝の営業は原則禁止。

平日も店は20時までに閉まる。コンビニなんてない。

キリスト教の文化的背景もあって、日祝は家族や友人、恋人などとゆっくり過ごす日。

 

「森の国」と言われるドイツは、本当に自然が豊富で静か。森や湖へ、ハイキングやサイクリングに行く。

ハイキングと言っても本格的な山登り。サイクリングも本格的で、赤ちゃん用ワゴンをつけて走れる。

犬を連れて散歩する人も多く、アウトドアを楽しんで、心身ともにリフレッシュする。

やるときはやる、休むときは休む

メルセデス・ベンツのスローガンは、「Das Beste oder nichts(最善か無か)」

金曜日や夏季・長期休暇には宿題が出ない。「やるときはやる、休むときは休む」

「生活のために働く」より「楽しく生きるために働く」と考え、仕事に人生の時間を奪われない。

 

家族との思い出や自分の生活を楽しむ。自分にとっての幸せを大事にしている。

上司の顔色を気にして仕事をする日本に対し、他人の目を気にしない働き方ができている。

メンタルを強くするドイツの子育て

自殺率の高い日本

15〜34才の死因、日本の1位は自殺で、G7の中でこれは日本だけ(厚労省2020年)。

自殺死亡率(人口10万人あたり)日本16.3人、英7.4人、独7.5人、仏7.9人という悲しい現実。

全世代で見ても、日本17.3人、独10.2人(2016年)と、日本人は自殺が多い。

 

若者の生きづらさには「自己肯定感」が大きく関わっているのではないか。

「自己肯定感」とは、生きる力、生を肯定する力そのものだから。

子供は優遇される

「他人に迷惑をかけるな」のような、大人目線で子供に注意やダメ出しはしない。

子供はあちこちでVIP扱い。エレベーターや電車、病院などの列で小さな子連れは優先される。

規則で、時間帯によって掃除機など騒音は規制されていても、子供の声はOK。

 

園児の声に「うるさい」とクレームが入る日本。

日本で、電車で乳児が泣かないよう、子供に声を出さないよう、肩身の狭い思いでベビーカーを乗せるお母さんは、信じがたい思い。

個性を重んじる

ドイツの幼稚園では、年齢によるクラス分けはなく、決められたカリキュラムもない。

登園したら一人ひとりが自由に遊び、子供同士が交流し、自由意志で好きな遊びができる。

けんかをしても止めず、激しいけんかになったら、言葉で話すよう促す。

 

著者から見ると、和の精神や協調性、勉強の基礎を学ぶ日本の教育は、子供は受け身になり、自分の意志を表現しにくい環境。

 

小学校は、子供一人ひとりの発達状態や学習テンポを重視していて、1年遅れで入学したり、留年することもある。

ヘルマン・ヘッセは1回、トーマス・マンは2回留年している。

 

学校のテストの答えは、記述式で、マルバツ問題や選択枝はない。

人前で話し、人の話をしっかり聞き、生徒同士が討論し合あう。

自分で考え、それを主張できることは、自己肯定感の高さにつながる。

 

ドイツの教育システムは、小学4年生で将来の進路を決める。

職業訓練コース、事務職や専門職になるためのルート(日本だと高校から専門学校に進学)、大学進学するコース。

 

勉強が嫌い、苦手な子もいるのが現実で、誰もが勉強、進学を強制することは、子供にとっては苦しい。

成績だけで評価せず、それぞれの長所を伸ばしていくことで、ありのままの自分を肯定することを後押しする。

 

他の子と比べたり、「成績が悪い」と子供を責めると、自己肯定感を下げてしまう。

親の希望を「子供のため」と押し付けず、本当に子供が望んでいるのか、プレッシャーをかけないことが大切。

子供との時間、夫婦だけの時間を持つ

学校の授業時間は短く、部活動はなく、塾通いは少ない。

宿題や習い事をしても、両親はできる限り子供と触れ合う時間をとる。

無理をして完璧な親を目指そうとせず、家政婦や外注システムを安価で取り入れ、ストレスのない育児をする。

時間に追われストレスを抱えて育児をすると、子供に伝わり、自分が親に迷惑をかけていると感じてしまう。 

 

子供が生まれても、互いをパパママと呼び合わず、二人の関係を変えようとしない。

二人きりの時間を大切にして、ベビーシッターを頼んで、夫婦だけでコンサートや映画、食事に行く。

ドイツは常識として刷り込まれた「夫像、妻像」ではなく、夫婦のあり方は、それぞれが話し合う。

 

子供は幼い頃から1人でベッドで寝、親が二人で出かけるので自立心が育まれる。

「子供と親は別人格」という考えが当たり前。親が自分の楽しみや生活を尊重する。

 

小さいころから子どもの意見を尊重し、親が子どもを、自分のもののように考えることもありません。

親子が互いに自立した関係を築けているから、子供への過干渉や支配が過ぎる「毒親」は、ドイツではあまりない。

子供は、無意識のうちに親をコピーしていくともいわれるので、子育て中も親が「自分の人生」を生きることが大切。

古い物を大事にする、エコ

キッチンではすべての物、調理道具や調味料まで収納する習慣があり、何十年も物を大事に使うので、収納できないもの、新しい物は買わない。

物欲に振り回されず、無駄に消費しないのは、環境への意識が高いせいもある。

 

ドイツはエコ先進国。自然豊かな環境が身近にあり、環境問題への意識が高い。

自分軸で生きる生き方は、自分自身を大切にする。

その延長線上に、自分のまわり、ご近所、地域社会、最終的に地球を大切にすることにたどり着く。

 

一方、日本では、最新の電化製品、衣類、さまざまな品に消費意欲を掻き立てられます。

ストレス発散のためにブランド品や服を買ってしまう人も少なくないようです。

「ありのままの自分」を認めてあげることができれば、物に囲まれていなくても、自分を肯定できるはずです。

みんなが助け合う

困っている人を見かけたら手を差し伸べるのが、ごく普通です。

ご高齢の家の雪かきを近所の人がする、隣近所で助け合うのは、当然のこと。

旅行に行くときは隣の家の人が、猫の餌やトイレ掃除をやってくれ、写真まで送ってくれる。

 

自分も頼まれごとをされれば、お互い様で快く引き受け、お金のやりとりは発生しない。

見ず知らずの人にも、親切に声をかけ、人に手を差し伸べている場面もよく見ます。

 

日本人は、見ず知らずの人には冷たく接しているように感じられる。

困っている人を助けたくても、周りの目にどう映るかを気にして、(自己肯定感の低さゆえ)行動に移せないようです。

 

自己肯定感が高い、自分の権利や存在そのものを肯定できる人は、他人の権利や存在も肯定します。

周囲の目を気にすることなく、人に親切にできます。

ドイツ人は、誰に対しても平等に接することができるのです。

音楽家や他の本から

ドイツ留学体験者から

ドイツのハレにあるマルティン・ルター大学の大学院に留学された、ピアニストの鈴木萌子さんから。

先生が休暇を大切にとられて、ピアノから離れることを話されています。

竹内幸哉さんラジオ番組『良い音楽には余裕と休みが必要だということ』続・鈴木萌子 ハレ留学

ドイツ在中のオペラ歌手、車田和寿さん動画『演奏家が風邪でキャンセルするのはプロ失格ですか?』より

ドイツは病欠の制度がしっかりしてるので、有給を使うことなく休める。

日本における、風邪や病気にかかることを、自己管理不足やプロ失格というプレッシャーによって、音楽家が必要以上に苦しむ。

誰だって予想もしない病気になる。そういう社会は、音楽家にとってマイナス。

ドイツの学校に行かれた息子さんが、日本の学校も体験されて。

ドイツで活躍中のヴァイオリニスト

池上彰さんの本

『本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」』2021 池上彰マライ・メントライン増田ユリヤ 著

日本は引きこもり100万人、中年も多い。

ドイツの学費は大学まで無料。子供のいる家庭へ支給が大きく、ホームレスや引きこもりはいない。

ドイツの投票率は70%、日本は30%。「VERY」は現代版良妻賢母。

最後に

私たちの考え方、自分が考えたり感じたりすることの基準は、育つ社会や教育の中で植え付きます。

それが、考え方の基本的な物差しとなり、自動的に思考します。

自分が持つ価値観は、絶対的に正しいものではありません。

 

日本人は、数字や肩書で人を計ってしまい、自分の成績や容姿を人と比べて、自分を低く考えてしまいます。

自分の考えを押さえ、空気を読んで人目を気にして、繊細さんになってしまう人もいます。

 

誰かに認められなくても、自分がありのままの自分を認め、自分を尊重する。

かつ、人の意見や存在も尊重する。そんな姿勢をドイツ人から学べたらいいです。

もちろん、すべてを受け入れる必要はありませんし、日本人にもいいところはあります。

 

それでも、休みをとることは、すぐにできます。

きちんと休んで、ルーチンや「やるべきこと」を追い出して、自分を開放してあげてください。

できれば、自然に触れたりひたったりしてください。

そうすることで、音楽を続けるのが辛くなったり、手やメンタルを故障したりすることは防げます。

 

人と比べることなく、あなた自身が自分の価値を尊重してほしい。

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『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

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