ピアノやギターの【腱鞘炎】レッスンは?手術する? 後編

ピアノやギター、ベース、管楽器、打楽器で親指の付け根が痛んだり、指を曲げる時痛い”腱鞘炎”

また、演奏で腕が疲れたり、肘が痛い、いわゆる”テニス肘”になることもあります。

こんにちは。

音楽家のフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

 

どうしたら傷めず弾けるでしょう。

腱鞘炎や肘の痛みの原因と対策について、後編です。

前編(原因)はコチラ

腱鞘炎を遠ざけて、うまくなる

姿勢から

多くの楽器は、指先だけが触れて操作をします。

体から指先までの間、体、肩、腕、手首、手は手綱、リードなので、どこもかたくない状態にします。

 

指を自由に動かせるために、手首を柔軟に使えること、そのために前腕からの楽器への位置関係で腕が動きやすいことが必要です。

腕が自由に動くために背中の筋肉にかたさがないこと、姿勢よく座ること、肩首がこらないことが大事です。

運指しやすい手

指は力を入れないほど、分離して細かく速く動きます。

今、エアで指をパラパラと動かすと、それぞれの指が独立、動きやすいのがわかると思います。

指を別々に細かく動かすには、小さな力で動かせます。

 

手は、物を掴んだり持ち上げるような、大きな力を入れることもできます。

この時、人差し指〜薬指か小指までの三、四指が同時に動くように、筋肉が働いて指が分離しにくい状況です。

演奏で指が精緻に動くためには、関節が屈伸しやすい、腱が関節で腱鞘内をスルスルと抵抗なく動くことが大事です。

 

指が動きやすいことと、指に力が入ることは別です。

演奏で指が動きやすいことは、力が入ることではなく、10本の形の違う指が、力を入れなくても動きやすいことです。

 

身につけた奏法によって、指が動きやすいか動きにくいかが違ってきます。

上記の手に負担のある状態での奏法になっていると、疲労や故障につながります。

 

楽器に余計な力を入れて動かし、楽器からの反力も大きくなります。

「動きにくいから指を動かせるように練習しよう、指をトレーニングしよう」と考えますが、初心者でなければ奏法自体を見直す必要があります。

指が動きやすい状態

小指側主導

小指側から楽器、道具へ手を持っていき、親指、人差し指に力が入らないようにします。

力が入る親指主導でなく小指側を主導にすることで、手や手首が柔軟なまま手指を使えます。

慢性的な尺側偏位ほか、前編はコチラ

 

自然な手の丸みを大切に

前腕から指先にかけての自然な丸みを帯びたカーブを大事にします。

手首は真っ直ぐか軽い凸で、曲げすぎない、反らさない。

手首が菅やネックで手のひら側に曲げていると指がピンと伸びて動きにくく、手が自由になりません。

前腕から手にかけて真っ直ぐか軽い凸
指が掌側へ丸まる、手の縦のカーブ
親指から小指にかけての手の横のカーブ

痛めない弾き方

ピアノ、ギター、ベースでのコツ

楽器別の簡単なポイントを少しだけ。

ピアノ

指を開いたり動かそうとせずに、手首から指を動かしたり傘を開くようなつもりで指を開くと、手が動きやすくなります。

詳しく≫ピアノで腱鞘炎を遠ざけて、弾きやすい手になる

 

ギター、ベース

ドアノブや鍵を廻す動きは、親指に力を入れて動かす動きなので、反復すると痛めます。

小指側を軸にしたページをめくるような動きで指弾きしたり、うちわを仰ぐように小指側を回転軸にするとスラップしやすい。

 

前腕から手を使う感覚があると、手が動きやすくなります。

ネック側も親指、人差し指に力が入らないようにするために、小指から指板に向かうように前腕から手を持っていったり、引き出しを引くようなつもりで押弦します。

 

押さえつけないで、移動しやすい、ビグラートやチョーキングなど細かいコントロールをしやすくなります。

動きやすくなる練習のコツ

楽器や道具に触れる指先が、ちょうどいい力具合で押せるように、力が入らない動きを身につけ直します。

テンポを遅く

小さな音で
弦楽器、管楽器などは音が出る音量

移弦、縦横など単純な移動から、音階や単純なフレーズへ

 

指関節を始め手首や肩、体から全ての関節が柔軟で屈伸しやすい状態で、優しく弾いて、楽に動かせるようにします。

尺側扁位がある方は、しばらくかかりますが気長に続けましょう。

難易度の高いテクニックや思い通りの音を出せることは、基礎的な動き方がいいことの上に成り立ちます。

腱鞘炎は手術で治る?

腱鞘炎の手術は、腱や腱鞘が腫れてスルスルと動かなくなったところの腱鞘を切ります。

すると、腱がスルスルと動きやすくなります。

日本整形外科学会「ばね指」治療

 

切っても同じ奏法をすれば、他の部分の腱と腱鞘が擦れて腫れて、また動きにくくなります。

手術した指の他の関節や、他の指まで腱鞘炎と切除を繰り返します。

ギタリストの井上堯之さんもその一人でした。

動画、最後に

《親指が痛い、肘が疲れた時の対策》

《演奏で手が痛い、指が痺れている時の休め方》

より弾きやすくなろうとして指を動かすトレーニングをされたり筋トレをされますが、残念ながら多くは逆効果です。

指のトレーニングをすることは痛める行為そのものです。

 

痛いな、疲れるな、動かないな〜というのは、動きにくいサインです。

痛いときは炎症を起こしているので、がんばらない。

優しく弾いて、楽に動かせる奏法を身につけるチャンスです。


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト、新堂浩子》

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

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