演奏でクセを直せないのはなぜ?ー音楽家が知っておきたい脳神経学

身についた弾き方のクセや体のクセって、なかなか変えられないですよね?

レッスンをたくさんする? 筋肉について知るといい?

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト、進藤浩子です。

 

奏法での動きは、腕や口の筋肉から始まるわけではありません。

パーツを動かしてコントロールしているのは、脳をはじめとする神経系です。

奏法での動きをコントロールしている神経系についてのお話です。

動きをコントロールしている脳神経系

考えなくても手が動かせるワケ

体の動きを司っているのは脳と神経系で、神経を通じて各部位の動きをコントロールしています。

ちょうどコンピューターにプログラミングがされていて作動できるように、脳に覚え込まれた神経プログラムを元に、手などが動きます。

中枢神経系ー脳、脊髄(背骨、脊椎の中)
⇅ 命令を出したり感覚をフィードバック
末梢神経系ー感覚神経、運動神経    

 

中枢神経である脳や脊椎から、情報が神経繊維を伝って抹消へすばやく伝わり、また、末梢から中枢へと情報が伝わります。

筋肉や関節にある受容器や手足が触る感触を、 脳や脊椎にフィードバックして伝えながら、動きを調節します。

 

手を動かす時、脳にあるプログラムで筋や骨格に命令しながら、腕の深部感覚、手の触覚、聴覚や視覚などを受け取り、コントロールしています。

 

手のことを意識して考えなくても、神経系で動きをコントロールしています。

スマホを操作したり書いたりするときも、私たちは脳や神経系でコントロールされて動いています。

背骨の中にある脊髄神経(下)
皮膚など神経で繋がっている

 

演奏を身につけるとき

神経回路のでき方

人が動いたり考えたりするとき、脳のプログラムである神経のネットワーク、神経回路で情報が伝わります。

神経のネットワークのでき方を見てみましょう。

 

私たちが何かを学ぶとき、脳の神経細胞にある突起が伸びて、他の神経細胞とつながります。

神経細胞をニューロン、つながるところをシナプスと言います。

神経細胞がつながってネットワーク(神経回路)ができ、その働きのパターンを作ります。

神経細胞(ニューロン)↓

ニューロンがシナプスでつながる↓

これは、生まれてから数年間が最も活発です。

子供が歩き始めたりする時には、脳の神経細胞に大量のシナプスが速く形成されます。

 

同時に活性化した神経細胞は、やがて決まったパターンを作ると考えられています。

繰り返すと、神経細胞の結合の数が減ってパターンを洗練していきます。(1949年ドナルド・ヘップ)

こうして、脳は速く効率良く学びます。

 

楽器をレッスンすると、手や腕の深部感覚、触覚、聴覚などの神経回路を繰り返してパターンを洗練し、指などが自動で動いていけるようになります。

 

ちなみに、神経のパターンは動きだけでなく、思考や感情、行動など人のあらゆる場面で作られます。

 

クセやジストニアが直りにくいのは

一方で、脳にできたパターンは、変化させる可能性のあるニューロンを拒み、新しいパターンを作りにくくします。

また、同時に活性化した脳の神経細胞は、決まったパターンを作るので、「同時に動作すること」を学んでしまう性質があります。

 

例えば、ギターで指板を見ながら弾く人は、視覚、顔の向き、指の動きがセットでパターンになっているので、見ないと手が動きにくくなります。

座ったら脚を組むとか、体のクセがなかなか直りにくいのもこのためです。

 

ジストニアになる、特に20以下の若年者がなるのもこのためです。

 

手が動きやすいとは

手が動きやすいとはどういうことでしょう。

器用について、久保田競『手と脳』から引用します。

 

『適切な筋肉が適切な力を出せるように、動作の時間的、空間的パターンがうまくできていることを意味する。

動作を行う直前に、前頭前野のなかに動作のプログラムができていて、つぎに行う運動の強さ、方向などの予測がされている。』

 

研究成果から一般法則はつくれないと書いた上で、手を器用に使えるには、

・まとめて訓練するより、継続的に少しずつくり返したほうが成績がよい。

・前頭前野を使うためには、手も足も、体の筋肉も使わなければならない。

としています。

 

おわりに

神経系、すっかり存在を忘れられていますね。笑

私たちは、自分でも意識しない脳神経系が覚え込んだプログラムで動いています。

 

脳は意図したことではく、繰り返した動きを学びます。

脳にプログラミングする過程が重要で、一旦できた神経回路は、新しいつながりをしにくくなります。

 

脳神経系が、筋骨格系の持つ自由さを統合して、パーツを精巧にコントロールします。

出た音で確認しますので、聴覚が精巧な動きを育て、微細な音のコントロールを可能にします。

聴く耳が精緻な動きをつくります。

 

正しいタイミングで正確な位置に動けるように、ゆっくりな動きで正確に音を出すこと、体を含めいい動きをしていることが大切です。

回数や速さを求めるよりも、いい音を出すこと、日数かけることを心がけてください。

 

《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上してより高いステージで揮けるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話

詳しくは プロフィール

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