腱鞘炎になってさらに進化したピアニストー手術する?しない?

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

今回は音楽家の故障において、治療に対する考え方や故障の影響にも目を向けてみたいと思います。

ランランさんのケース

ピアニストのランランさんは、2017年に左手の腱鞘炎を患い、1年3ヵ月もの間、表舞台から離れていました。

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100以上ものコンサートをキャンセル、その中にはその中にはベルリン・フィルやウィーン・フィルとの公演など、私にとって重要なコンサートもあり、とてもつらい思いをしました。

でも、「生きるうえではバランスが大切、何ごとも焦ってはいけない。

次へ進むために準備することが重要なのだ」と、学ぶ期間であったと思います。

 

人間として成長できたし、忍耐力もついた気がしますね。

全身のエクササイズを継続して、食事に気をつけたおかげで、故障する前よりもずっと体調がよくなった。

 

復活コンサート演奏中に、まるで自分が生まれ変わったような感覚がありました。

故障したことによって、どれほどピアノがかけがえのないものだったかを痛感したのです。

記事は、https://fujinkoron.jp/articles/-/382

彼が腱鞘炎を手術したかは記事になっていませんが、幸い回復したとあるので手術せずに回復されたような印象です。

アジアから世界へ音楽を広げたり、貧困層の子どもたちの音楽教育プログラム、音楽家育成などにも力を注いでいます。

プロの腱鞘炎の原因は

演奏家の腱鞘炎や拇指CM関節症などは、手だけの問題と捉えがちですが全身や心理面と大きく関わります。

熟練者の方の場合、わかりやすい原因は、ハードなレッスンをされたり多忙ゆえのストレスです。

他にも、姿勢や手腕の使い方、自律神経やホルモンの影響、心理的な負担、レッスンのやり方も影響します。

 

姿勢、指に過剰な力が入らない奏法など、改善できる点はあります。

女性であれば産後や更年期に手が影響を受けやすいし、気圧や気象によって関節に痛みが出やすい人もいます。

 

心理的な負担に関しては自覚ができません。

傷めたときは、自分にとって何らかの負担があることを警告しています。

手術するかしないか

手の痛みに関して、手術をすべきかどうかや、術後の経過についてのご質問をときどきいただきます。

私がアドバイスをすることは、実はあまりありません。

ここでは治療法を選択する以前の考え方について、書いておきます。

 

1,治療法を選択をするのは自分

今は情報があふれているので、選択肢に迷うことになります。

治療法をどれにするか決めるのは、専門医でも楽器の指導者でも私でもありません。

ご自身です。

 

アドバイスしてくれる人の意見を聞かないのは、申し訳なく感じてしまいます。

アドバイスしてくれる人の気持ちではなく、自分の意志が大事です。

本当にあなたを思ってくれる人であれば、例え自分の意見を選ばなくても応援してくれるはずです。

 

2,手術しても、よくなるのは自分の体によるもの

腱鞘炎で腱鞘を切れば、指は動きやすくなります。

でも、同じ奏法をすれば、他の関節が腱鞘炎を起こす可能性があります。

 

外科的に切る方法は、症状のみを消し去ります。

ガングリオンのように、できものを切除すればいい場合もありますが、

痛みの場合、痛みを起こした原因を残してしまい、根本的な解決策とは言えません。

 

専門的な処置がベストと思い込んでしまう人がいますが、手術はあくまで一選択肢ですし、リスクもあります。

何の手術にしても術後に指が弾きやすくなっていくのは、ご自分の力、体の力です。

 

3,気持ちや考え方は、なおりに大きく関わる

例えば、「悪い病気ではないか?」と不安だと症状や痛みが消えません。

診てもらうだけでも、気が楽になって症状や痛みがよくなることがあります。

手の痛みも、症状を重く考えたり不安があることで、痛みを長引かせたりレッスンしづらくなります。

災い転じて

ランランさんに話を戻しますね。

 

演奏家は痛めることで、経済的、精神的に大きなダメージを受けます。

共演のチャンスの喪失のショック、仕事のロス、経済的損失、自分の責任、自分が失敗しているような気持ちにもなるでしょう。

故障、痛みが長引けば、精神面に大きく影を落とします。

 

一方で、故障したことによって、大事なことが見えてくることもあります。

弾けることが幸せなことだと再認識したり、ランランさんも、体の健康や仕事のバランス、音楽への思いややりたいことに気づいたりされたと。

まとめ

生きていると、想定外のことや絶望するようなことも起こります。

故障や痛み、人間関係、恋愛の悩み、家族のこと、お金のこと、パンデミック…

 

苦しいことが実は、自分に力や教えとなります。

苦しんでる最中はつらいですが、後から、ほんとに後からわかります。

つらいことや悲しいことは、自分にとって幸せなことの裏返しです。

 

コロナの今でも、やりたいこと、やるべきことができず苦しいですが、

私たちが自分と向き合い、自分にとって本当に大事なことを温める機会なんだと思います。

 

「あれがあったせいで」と愚痴ってしまいたくなりますが、「あれがあったおかげで」と言える日がいつかきますよ。


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

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