「本物の思考力を磨くための音楽学」ショパンで初めて泣いたのは

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のためのパーソナルトレーナー進藤浩子です。

 

今回は本の紹介です。

『本物の思考力を磨くための音楽学 本質を見抜く力は感動から生まれる』

泉谷閑示 ヤマハミュージックメディア (2019/6/23)

思想、哲学、そして人間のあり方、色んな角度から”音楽の感動”について書かれていてます。

紹介文よりー多くの音楽の分析を交えながら、生きた音楽といかに出会い、そこから何を学べるかを考えていく。

泉谷閑示さん

まず、著者の泉谷閑示さんについて。

精神科医。作曲家。東北大学医学部卒業。

99年に渡仏し、パリ・エコール・ノルマル音楽院に留学、パリ日本人学校教育相談員を務め帰国。

2005年より精神療法専門のクリニックを開業(『泉谷クリニック』東京)。

『「普通がいい」という病』、『仕事なんか生きがいにするな』など著書多数。

 

精神科医としての泉谷さんの考えは、心身症やうつなどは心の状態が身体に表れたもの、

うつなど心の病いは、休んだり投薬である程度は良くなっても、ぶり返してしまいます。

だから、”治癒”でなく”寛解”という言葉を使います。

だけど、全く生き方を変えたら、治るだけでなく幸せになったりする。

薬でなく、生き方を見直すことで完治できる、という考えはとても共感します。

 

『本物の思考力を磨くための音楽学 本質を見抜く力は感動から生まれる』

以下は、本の抜粋の要約です。

生きた音楽

いくら演奏技術に長けていたとしても、そこに人間としての経験と深い洞察力が備えられていなければ、「感心」させることはできても「感動」を喚起するには至りません。

音楽は、三回転半ができたかどうか、といった超絶技巧でどうなるような代物ではないからです。

 

「技術的傷もないが、音楽もない」演奏が世の中に氾濫してしまったがために、魂の次元で音楽を求めている人たちは、コンサートにあまり足を運ばなくなった。

現代人の疲弊した魂を潤し、生きる意味を回復させてくれるはずの芸術。

しかしその芸術までもが、いつの間にか根源的な力を失っている。

超越的で深みある表現

グールドなどのような自己を主張するような演奏ではなく、

自我のない超越的で深みある表現は、故障や精神的苦痛によるブランクがある。

 

モラヴェッツは、20代で手の故障をし5年にも及ぶブランクがある。

トランス状態のような自我を脱落させた静観で瞑想的な、

聴き手側の内面の状態が彼の演奏によって鏡のように照らし出される、奇跡的状態を実現できるのだと確認できた。

 

キース・ジャレットは、絶頂期に慢性疲労症候群で2年間の療養。

支えてくれた夫人への感謝を込めてスタンダードナンバーを宅録し、クリスマスプレゼントにしたもの、

CD「The melody at night with you」として発売。

激しく才気煥発な演奏だったキースが、それまでの尖った表現はすっかり影を潜め、シンプルで暖かい表現になっているのです。

 

かのホロヴィッツでさえ、娘の自殺未遂が原因とも言われていますが、絶頂期の50代から12年も長いブランクがある。

そこから復帰した1956年のカーネギーでは、従来の熱量の高い演奏に、どこか優しく深みのある表現も加わっている。

 

芸術とは

「芸術とは、人間存在への飽くなき関心なしには意味をなさないもの。

技術をいくら磨いてもこれが欠如しているものを芸術と呼べない。

 

ロイヤルシェイクスピアカンパニー、ピーターブルック、ビナバウシュやジョンマイヤーのバレエ公演、

少なくとも私が会場で見かけた音楽家といえば、○○くらい

 

(衝撃のお名前でした)

 

少なくとも私が会場で見かけた音楽家といえば、細野晴臣氏くらいだったのは、寂しいことです。」

 

愛がわからなければ、ショパンは弾けない

「芸術は教えることができない。

愛がわからなければ、ショパンを演奏できるでしょうか?」

というハンガリー出身のピアニスト、タマーシュ・ヴァーシャーリの言葉が引用されています。

 

ここからは私の文です。

「椿姫」でのショパン

ジョンマイヤー監督のバレエ「椿姫」には、ヴェルディの音楽ではなく全編にショパンの曲が使われます。

「椿姫」は、愛し合いながら男性の父親から娼婦ゆえに身を引くよう言われ、主人公は諦めさせるために別の男と関わります。

二人は愛し合いながらも、最後、女性は結核で死んでしまうという物語です。

 

私は何十年もショパンを聴いてきたのに、「椿姫」で流れるショパンで初めて泣きました。

愛の喜びや対局の愛する人が死んでいく悲しみに、ショパンの曲の美しい心情が響いたのでしょう。

 

ショパンの譜面を完璧に弾けても、人生の経験からくる深い感情に響かないと美しさは伝らない。

音楽に感動するのは、作った人の心情や奏者の人生からくる深い感性に共感するから。

と思います。

 

人は生きていればいいことだけでなく、大切な人が亡くなったり、病気になったり不条理な苦しみも起こります。

悲しいことや困難なことも人生の一部で、それはその人の深く豊かな人間性として音楽に反映されます。

 

『本物の思考力を磨くための音楽学 本質を見抜く力は感動から生まれる』
泉谷閑示 ヤマハミュージックメディア (2019/6/23)


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《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

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思うように動かせない、痛みや悩みを抱えている音楽家の方が、

動きを回復して能力を伸ばし続けるよう、支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門のフィジカルセラピストに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話。

詳しくは プロフィール

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