音楽家のジストニア、ドラマーの脚や腕、管楽器での口など、演奏時にパーツを動かせなくなるタイプのジストニアについてです。

実力があるのに出せない

スポーツのイップス

ゴルファーがパターが打てない、野球で普通に投球できない、弓道で弓を離せないなど、

それまでできていた“なんてことのない”動作ができなくなることを「イップス」と呼びます。

 

スポーツでは、緊張しすぎて動けなくなったりミスをしてしまう精神的なものと考えられていました。

近年、イップスはジストニアではないかと考えられています

メンタルが弱いせいとか精神論、メンタル面で改善できることではありません。

 

イップスや音楽家の簡単な動きができなくなるタイプのジストニアやは、心理と無関係ではありません。

スポーツにしても音楽にしても、プレイにとって大事な部位に起こります。

海外では、舞台俳優やアスリートがプレッシャー、批評など積み重なった心理的な負担から、舞台恐怖症やイップスを招くとされています。

 

レッスンをがんばってしまうと

プロの音楽家やステージで演奏する方は、真面目にレッスンに取り組んできて、高いレベルまで上がって来られました。

実力が発揮できなかったことにショックを受け、レッスンを頑張ります。

 

問題は技術的、局所的なものではありませんから、レッスンを多くしても残念ながら効果が出ません。

がんばったのに上手くいかないと、いら立ち、自分へ怒りなども覚えます。

 

本番が近づくと、大きな不安は筋肉を緊張させてしまいます。

がんばっては自己嫌悪というスパイラルにはまります。

 

演奏を邪魔しているのは

パーツのジストニアは、脳がそれをさせまいとしていることを理解する必要があります。

演奏しようとすると、自分で意識できない脳の深いところから演奏を阻止しようとします。

 

できるはずの演奏ができないのは、脳が演奏することを脅威、身の危険としています。

脳が演奏することをブロックします。

 

ただ、今の状況からきているというより、自覚できない怖さ、傷みが脳にある、

過去、大きく負担となった事やこれまでの積み重ねが脳にあるせいで、今、脳が体をコントロールできない状態です。

 

症状

脳に閉じ込めた怖さは、似た状況で誘発されるため、演奏しようとすると症状が出ます。

脳にある怖さが、思考や体に表れます。

演奏で動かせない以外の症状として、

 

・不安感 

本番中にずっと不安。

自分が何について不安を感じているのがわかる場合と、不安がどこから来るか全くわからない場合と。

 

予期不安

「また前と同じことが起こるんじゃないか」と以前起きたネガティブな出来事が起きそうで怖い。

 

身体感覚の過剰意識

手指など問題のある部分の感覚の過剰意識。

問題のあるパーツに意識が大きく、緊張があって自然な動きができない。

 

解離状態

長年のうちに身についた動きが突然できない。

体や手、思考が分離、麻痺する感覚。

一般のトラウマに苦しむ人に顕著な症状で、反復する身体的な障害に顕著な症状。

 

体がかたまる

筋肉の緊張。

パーツにある場合もあれば、体に感じられることも。

ウォーミングアップしても体をほぐせない。

 

混乱状態

頭が働かず、わけがわからない、集中できない。

不安が強いあまりに、リラックスや集中することができず、手や思考のコントロールができなくなります。

不安感や解離からつながったもの。

 

・過度の思考、自分に対するネガティブ思考と自己卑下

無理やりがんばろうと考える。

過剰にネガティブな思考とセルフトーク。

継続することで考えが歪み、歪んだ考えで自分を苦しめる。

「自分なんてダメ、落ちこぼれだ」と浴びせる。

 

・無力感、フラッシュバックなどトラウマ様症状

トラウマ様の症状は、軽いものから重いものまで個人差があります。

PTSD(心的外傷後症候群)など診断がつくような症状とは限りません。

 

積み重なる負担

本人にとって心理的に極度の負担となることは、積み重ねられていきます。

問題が起きるということは、脳が過去の出来事の情報を上手く処理できなかった状態にあると言えます。

 

音楽家の場合、人前でのミス、演奏する部位の痛みなど、心理的に大きな負担はトラウマになり得ます。

ケガや病気での感情的心理的な負担は、脳に傷、トラウマとして残ります。

感情的身体的な傷みが積み重なって臨海域に達すると、脳にある怖さが、動きや思考を邪魔します。

 

さらに、がんばっては上手くいかなかいことで、ストレスを募らせたり、

うまく演奏できない自分を責めたりすることで、心理的負担が重なってしまいます。

 

自覚しない脳に残る傷

通常の体験は、いいこともよくないことも、脳で処理して記憶します。

でも、極度に心理的にネガティブな体験の場合、脳で処理できず未処理のまま閉じ込めます。

 

脳が出来事を記憶として処理できていないので、自分で思い出せません。

覚えていないこともトラウマの特徴なのです。

 

本人にとって精神的身体的に凍りつく様な経験は、トラウマになります。

音楽家の場合、きっかけとなる出来事やトラウマそのものが原因ではなく、主に精神的な負担が脳の中に蓄積されていって、ステージ後や何年か経ってから起きます。

 

トラウマとは子供時代の虐待、いじめに限りません。

思春期頃までの身の危険や心の負担が大きい体験は、脳は記憶の処理ができず封じ込めてしまいます。

記憶となっていないので、考えても思い出せません。

特に幼少期にあった出来事、事故や災害の経験や目撃は見落とされがちです。

 

養育環境、個人の気質、出来事の大きさなどにより、表れ方は人それぞれです。

アスリートやダンサーの場合、試合や舞台でのミス、ケガによる痛みなどがトラウマを大きくし、慣れた簡単な動きができなくなります。

 

演奏での動きを回復する

解決するところは脳

脳にある怖さが、演奏やステージに上がろうとすると、症状を表します。

脳が演奏をブロックする時、脳はその状態から抜け出したいと欲しています。

 

体に表れる症状や恐怖感は、脳が傷や過去の出来事を「取り出して欲しい」と訴えています。

問題は脳の中で起きており、原因も脳神経系の中にあるので、解決するところは脳の中です。

 

脳で過去の出来事を処理できていないので、自分で意識できず対話では出てきません。

認知的、意識的なやり方では解決できず、脳の奥、無意識のところへの対処が必要になります。

 

パーツの動きを回復する

唯一の解決法は、脳が抱えている問題を取り除く、脳に隠れている怖さの元を除きます

脳にある過去の出来事を取り除くことで、トラウマティックな恐怖があった神経系が癒されます。

 

脳にある脅威を癒すことで、演奏する邪魔をしていたものがなくなり、動きは戻ります。

舞台恐怖症やイップスでは、トラウマを解決することで、再びステージに立っています。

 

脳に抱えていたものを解放すると、能力は伸びます。

トラウマを解放することは、個人の素質、演奏や音楽の能力を伸ばし、自己の成長につながります。

身体的精神的なの安らぎを得られて、自分を肯定できます。

 

今まで抱えていた負担や大変だった経験を自分が乗り越え、生きていること、音楽ができることなどを喜べるようになります。

レジリエンス、回復力と言います。

 

人として回復することなしに、演奏の問題が回復することはありません。

トラウマは「解放する」と言い、記憶になかったものが出ていくので、辛くはないです。

ジストニアやステージフライト は、成長するチャンスでもあります。

 

自分でできること

自分でできる脳神経学的なアプローチを紹介します。

脳の修復において、体と心は大きな役割を果たします。

本人がよくしようと心、体、頭を駆使することで、脳の神経可塑性、脳の治癒力を呼び起こします。

 

効果的な方法の一つとして、思考の力によって脳の神経回路を変えたり、感情や感覚を結びつける方法も多く報告されています。

考え方や気持ちのあり方、体から脳にアプローチすることで、自分でできることでもある程度効果があります。

 

思考によるもの

・自己受容

ジストニアの本質は、自分の外、観客や状況にあるのではなく、自分の内にあります。

ステージで上手くできなかった自分を恥じたり、批判しないでいます。

自分を責めたり「頑張らなくてはいけない」と考えなくていいです。

 

心理的に大きな負担がある、自分が一番自分を思いやります。

自己受容とは、演奏がうまくできなくても、自分を批判せず自分をまるごと受け入れます。

自分にとことん優しくある。傷んでいる自分に共感してあげる、自分を慈しんでください。

 

完璧主義だと自分を責め、「こんなことではいけない。もっと弾けなくてはダメだ」と攻撃してしまいます。

自己と闘わず、自分を安心することが必要です。

自分自身に対してサポートをし、自分の内面に安全な状況を作ります。

 

身体感覚から

・体を安定させる

自分の体を山の如く想像してどっしりと、足底に自分の体の重みを感じます(グラウディング)。

体、姿勢を安定させることで落ち着きを得ます。

 

・瞑想、マインドフルネス

体を落ち着け、体の感覚に目を向けたり、思考を落ち着かせます。

 

・左右両側の刺激

バイラテラルなタッチ、動き

・ストレッチ

以上、ワークと神経学的な説明は
「本番で落ち着くための簡単ワーク」ワーク

・視覚遠近法

強い不安や恐怖を感じたら、部屋の遠いところと顔の前30cm程に立てた指を、交互に見ます。

数秒ごとに視線を行き来させます。2分間。

↑の目を動かすワークと同じで、迷走神経を介して副交感神経を亢進させます。

「顔や目からリラックスするわけ」

 

ブレインスポッティング

ブレインスポッティングとは

米、デイビッド・グランド博士によって開発された、トラウマ改善の心理技術です。

視線、目の位置によって脳にある問題に強く集中することで、体への影響を取り除きます。

 

一般のトラウマ患者だけでなく、イップスやパフォーマーに用いられています。

効果が早く、かつ大きい、思い出そうとする必要がないのでつらくないことが特徴です。

 

ブレインスポッティング参照ページ

・(英語)デイビッド・グランド WHAT IS BRAINSPOTTING?

・日本語での説明動画「ブレインスポットとは?」

・日本の演劇俳優の例

 

隠れた脳の痛みを取り除かないかぎり、パーツのジストニアの根治はありません。

脳、人は過去の傷みから立ち直ることが可能です。

 

私の場合

映画でDVシーンを観た後、PTSDを発症しました。

その時は映画のシーンがフラッシュバックして体がかたまるので、自分にトラウマがあるなど思ってもいませんでした。

ブレインスポッティングを自分にやったら、高1の時ショックを受けた出来事を思い出しました。

 

同時に、自分がなぜこの仕事をやるか思い出せました。

そして、30年以上思い出さなかった、自分の原点も思い出したのです。

それまでは、今の仕事をするのは、体にしか興味ないからと思っていました。

 

閉じ込めたトラウマは、取り出して解放するので思い出しても辛くありません。

そこから楽になったし、むしろ力強くなりました。

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私の例も詳しく書いています。

 

《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上してより高いステージで揮けるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話

詳しくは プロフィール

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