あがり、ステージ恐怖症、音楽家の不調を理解する「ポリヴェーカル理論」

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のためのパーソナルトレーナー、進藤浩子です。

 

非常事態宣言が出た頃よりは落ち着いて、おこもり生活にも慣れてきたのではないでしょうか。

活動できない今のうちに、体調を万全に整えていきたいです。

まずは、ご自分の体に向き合っていただくために、体について理解する助けになれば幸いです。

自律神経は三段階「ポリヴェーカル理論」

交感神経と副交感神経

自分で動かせるような運動神経系と違って、体の生理的な働きは自律神経系によって自動でコントロールされています。

 

自律神経は、交感神経系と副交感神経系の二種類があり、

交感神経系 昼間は交感神経が優位でシャキッとします。「闘争と逃走」の神経と言われ、興奮して大きな力が出せます。

副交感神経系 食後や寝る時は副交感神経が優位。「消化と休息」。迷走神経という神経が8割。

体の色んな器官は、交感神経系と副交感神経系の二重の支配でコントロールされています。

こおりつき「ポリヴェーカル理論」

自立神経系は三段階という「ポリヴェーカル理論」が、1996年にステファン・W・ポージェス博士により発表されます。

副交感神経の迷走神経は、顔面神経、舌咽神経、副神経、三叉神経の4つの脳神経と合わさって働きます。

(三叉神経とは、上あご・下あご・首に三股に分かれて分布しています)

 

これらは、顔の表情や声を支配しています。

なので、感情や心理は顔の表情にダイレクトに出ます。

顔や首の筋肉を動かし、知覚する
迷走神経、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経

(ちなみに、脳神経とは、顔での感覚(嗅・視・聴・味覚)や、口や目の動きなどを司る12種類の神経です。

これに対して脊椎神経があり、脊椎、背骨から手足などに出ています。)

 

この迷走神経が、2つの反応をします。

おだやかなとき(腹側迷走神経系)と、凍りつくとき(背側迷走神経系)です。

自立神経は、交感神経を含めて3段階ということです。

 

人を含む哺乳類にだけ発達した「腹側迷走神経系」

目、表情、声、口、心臓、気管、肺など、横隔膜より上で、「社会神経系」と呼んでいます。

発生学的に、私たちが陸に上がって呼吸をし、仲間とともに生活をするように発達したものです。

 

一方、背側迷走神経系は、人が身の危険を感じるときの反応で、トラウマや発達障害が起こるメカニズムを解明しました。

 

つまり、自律神経の分類は、従来は交感神経と副交感神の二段階でしたが、

腹側迷走神経系交感神経背側迷走神経系の三段階で考えるとわかりやすいです。

(安全危険な止まると信号機の色で表しています)

自立神経系、3つの階層

私たちは生きていく上で、腹側迷走神経系(社会神経系)交感神経系背側迷走神経系の順に対応します。

 

1,腹側迷走神経系(社会神経系)が優位に働いていて、落ち着いた社会生活を送ります。

見たり聞いたり笑ったり、声でコミュニケーションをとり、酸素を吸って、食べて消化します。

交感神経系、背側迷走神経系が低く抑えられています。

 

2,緊張状態のときには、交感神経系が支配します。

興奮している状態で、脳は高い覚醒状態になるので、頭痛を起こしやすく、イライラや不眠につながります。

動悸や血圧上昇、胸での呼吸、キリキリした胃痛、腸の働きを抑えるので便秘となり、筋肉はかたく、首や肩の筋肉はこります。

おだやかな社会神経系(腹側迷走神経系)はオフになります。

本番であがる状態はここです。

>音楽家のあがり、原因と克服

3,交感神経系で対応できないときには、背側迷走神経系が支配します。

凍りつきの反応で、社会神経系、交感神経系はオフです。

恐怖から身体的な症状が出て、正常な思考回路は働きません。

吃音や赤面症を含む不安障害、パニック障害、PTSD、うつ状態を引き起こします。

ステージフライトはこちらに入ります。

>ステージフライト、ステージ恐怖症

「あがりが克服できない【ステージフライト】ー凍りつきとは」

「なぜステージフライトは繰り返すのか?凍りつきの神経学」

怖さから体に色んな症状が出る

表情や声

副交感神経の8割以上を占める迷走神経は、運動神経と感覚神経からなり肺、消化器の運動も調節しています。

つまり、顔や口を動かしたり、視覚、音、皮膚などを感じます。

迷走神経が、首から上のコントロールに密接に関わっていて、呼吸や胃腸にも伸びています。

 

なので、心理的な負担から、顔の表情や首・肩の筋肉、声や呼吸、胃腸にも影響が出ます。

肩こり、お腹の調子も

副神経という首や肩を支配している神経があります。

この副神経は、迷走神経のサブ、付属の神経で、首の横につく胸鎖乳突筋、肩から首にある僧帽筋に付いています。

ストレスがあったり緊張したりすると、上半身のかたさやひどい肩こりが表れます。

 

迷走神経と副神経が、胃腸を支配して連動しているために、ストレスから胃が痛くなったり、下痢を起こしやすく過敏性大腸炎になります。

本番前に、顔や上半身がかたくなったり胃腸に出るのは、このためです。

まとめ

  • 自律神経のバランスが崩れると、様々な症状が出る。
  • 自律神経は三段階、社会神経系→交感神経系→凍りつき、で理解しよう。
  • 交感神経が亢進すると、頭痛、イライラや不眠、胸での呼吸、胃痛、便秘、首や肩のこりを起こす。
  • 背側迷走神経系は、顔・首・肩の筋肉、声や呼吸、胃腸を支配するので、かたさ、声が出ない、下痢、胃痛などの症状が出る。

《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上してより高いステージで揮けるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話

詳しくは プロフィール

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