音楽家の局所性ジストニア Musicain’s dystonia

ジストニアという病気について

身体が意思とは関係なしに動いてしまう状態のことを不随意運動といいます。

ジストニアという病気は、無意識に筋肉がこわばってしまう不随意運動の1種です。

ジストニアは、ジストニアの症状の分布に基づいて、局所性ジストニア、全身性ジストニアなどに分類されます。

その原因は脳からの指令の異常にあります。

つまり、ジストニアは脳の病気なのです。

東京女子医科大学脳神経外科のサイトより
http://www.twmu.ac.jp/NIJ/column/dynamic_disorder/dystonia.html

ジストニアとは、音楽家の場合、楽器を演奏する部位を思うように動かせなくなることをいいます。

病気の分類は、成り立ちが違っても似たような症状のものを、同じカテゴリーに入れます。

演奏など動きと関係なく起こる、全身や局所のジストニアもあります。

後者は原因がわからないものが多く、小児期に発症したり、目の周りや首、体などにねじれなどの症状が出ます。

演奏家やイラストレーター、筆で起こる書痙など決まった動きをコントロールできなくなるものを、「動作特異性ジストニア」「職業性ジストニア」と呼んでいます。

‘一つの部位に起こる’という意味で「フォーカルジストニア」とも言われます。

音楽家のジストニア

手の指を思うように動かせなくなるタイプ、あるいは脚や口などパーツを思うように動かせなくなるタイプがあります。

手の指を動かせなくなるタイプ

ピアノやクラッシックギター、ベースなどで、特定の指が曲がってしまう、または伸びたりして、指をコントロールできなくなる。

パーツを動かせなくなるタイプ

ドラマーの腕または脚、管楽器奏者の口、声楽家の喉など、演奏に大事な部位で慣れた動きができなくなる。

すばやく反応しなくなった、筋肉の緊張、硬直など。

続きは≫パーツのジストニア回復編

ここからは、「手の指を動かせなくなるタイプ」のジストニアについて、です。

指のジストニア

指のジストニアの症状

初期症状として、音のつながりのちょっとした不安定さ、動きの抵抗感、わずかに突っ張る感じ、動かしづらさなど。

徐々に進行していくと、適度の指の屈曲などをコントロールできないようになってくる。

この時点になって、症状は練習不足ではないと気づきます。

一般的にジストニアは徐々に発症するため、いつ発症したのかわからない音楽家が多い。

しかし、突然発症した場合には、その瞬間を明瞭に覚えている場合もある。

指がすばやく反応しなくなった、指が内側に曲がったまま伸びず次の音にいけないなど。

ジストニアを特徴付ける最もな特異な症状は、演奏中ある特定の動作を行うときのみ症状が現れること。

楽器を持たずに行うと苦労なくできる割合は非常に高い。

ー『Musician’s Dystoniaどうして弾けなくなるの?』音楽之友社 P16~18

なぜ指が動かせなくなるの?

わかりやすい神経回路のでき方

人が動いたり考えたりするとき、脳の神経ネットワークで信号が伝わります

神経のネットワークのでき方を見てみましょう。

私たちが何かを学ぶとき、脳の神経細胞にある突起が伸びて、他の神経細胞とつながります。

神経細胞をニューロン、つながるところをシナプス(接合部)と言います。

神経細胞がつながってネットワーク(神経回路)ができ、その働きのパターンを作ります。

神経細胞(ニューロン)↓

ニューロンがシナプスでつながる↓

これは、生まれてから数年間が最も活発です。

子供が歩き始めたりする時には、脳の神経細胞に大量のシナプスが速く形成されます。

同時に活性化した神経細胞は、やがて決まったパターンを作ると考えられています。

繰り返すと、神経細胞の結合の数が減ってパターンを洗練していきます。(1949年ドナルド・ヘップ)

こうして、脳は速く効率良く学びます。

楽器をレッスンすると、脳で多くの神経細胞とシナプスが、動き、音と結びつきます。

手の動き(筋肉や体性感覚)と視覚、触覚、聴覚などの神経回路を繰り返してパターンを洗練し、指が自動で動いていけるようになります。

神経のパターンは思考や感情、行動など人のあらゆる場面で作られます。

動きは変わりにくい

一方で、脳にできたパターンは、変化させる可能性のあるニューロンを拒み、新しいパターンを作りにくくします。

また、同時に活性化した脳の神経細胞は、決まったパターンを作るので、「同時に動作すること」を学んでしまう性質があります。

例えば、ギターで指板を見ながら弾く人は、視覚、顔の向き、指の動きがセットで学んでいるので、見ないと手が動きにくくなります。

奏法や体のクセが変わりにくいのは、このせいです。

指はつられやすいところ

指は解剖的に元々つられやすいところで、ある指が動く時に、他の指が同時に曲がったり伸びたりしやすいです。

ピアノで他の指が打鍵している時に、小指がぐるっとまるまったりピンと立ったり、

ギターやベースの押弦で押していない指が丸まったり伸びたりしますよね。

演奏しやすくなるための手の解剖学

ジストニアでは、ある指が他の指の動きで曲がったり伸びたりする脳のパターンを作ってしまっている、と言えます。

楽器の演奏で二本の指をを長らく同時に動かしていると、これら二本の指に対応するマップが融合することがあり、そうなると一本の指だけを動かそうとしても他方の指も同時に動く。

言ってみれば、二つの指に対応するマップが「脱差異化」するのである。(注釈;差異化、別々にできないということです)

これら二本の指を無理に別々に動かそうとすると、両方の指が同時に動くことで、融合したマップがさらに強化される羽目になる。

一度「脳の罠」に捕らえられると、そこから強引に抜け出そうとすればするほど罠に深く嵌る。局所性ジストニアと呼ばれる。

私たちは誰でもそれほど劇的なものではないにしろ、その種の「脳の罠」にはまりやすい。

『脳はいかに治癒をもたらすか』ノーマン・ドイジ 

≫続きは指のジストニアを動かせるようになるために

《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

ステージに上がる音楽家のためのパーソナルトレーナー

思うように動かせない、痛みや悩みを抱えている音楽家の方が、

動きを回復して能力を発揮し続けるよう、支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門のフィジカルセラピストに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話

詳しくは プロフィール

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