あがり症とステージフライト、違いは?

本番前か、本番中か

人前に出る、歌や演奏しようとする前は、誰でも緊張します。

ステージに立って奏らなければならない状況になると、怖さや不安を感じ、心拍やパーツなど体に変化が出ます。

 

あがり症の人でもステージで演奏し始めると、ごく普通の人程度の不安しか感じなくなる、

やってみれば怖くなくなることが経験上わかってきます。

全くあがらなくなるわけではなく、回数を重ねるとあがってもある程度冷静さを保てて奏でやすくなります。

 あがり 「あがりのメカニズムと克服」

 

本番が始まっても怖さや不安が大きい、動きをコントロールしにくい場合をステージフライト、ステージ恐怖症と言っています。

ステージに出る前の不安、予期不安よりも、本番中の方が恐怖を強く感じます

ただ、あがりとステージフライトの間に明確に境界がありません。

症状

不安感

ステージ中ずっと不安。

自分が何について不安を感じているのがわかる、または不安がどこから来るか全く説明できない。

 

予期不安

「またソロでミスをするんじゃないか」「また頭が真っ白になって暗譜が飛ぶんじゃないか」など、

以前起きた出来事が起きそうで怖い。

 

・身体感覚の過剰意識

指など部分的感覚の過剰意識。

一ヶ所に意識が大きく、緊張があって自然な動きができない。

 

・混乱状態

リハーサルしよう、集中しようとしても、頭を働かせられない。

 

・回避行動

動揺した体験と同じことや思い出させることを避けようとする。

強い不安を伴うことが多い。

無意識のうちに病気、具合が悪くなるなど、参加できなくなる。

 

・ネガティブ思考や自己卑下

過剰にネガティブな思考とセルフトーク。

継続することで考えが歪み、歪んだ考えで自分を苦しめる。

「自分なんてダメ、落ちこぼれだ」と浴びせる。

 

以上の全てではなく一つか複数、主に上2つの症状が出ます。

様々な恐怖症、社会不安障害

社会不安障害とは、一般の方でも場面によって怖さ、緊張を感じ、手や体の震えや吃音など体に症状が出ます。

あがって人と話せない、乗り物に乗るのが怖いなど、「不安症」や「〇〇恐怖症」ともいいます。

 

赤面恐怖症、発汗恐怖症、対人恐怖症、書痙(人前で字を書こうとすると緊張して手が震える)などで、行為が難しくなります。

発症は10代半ばから20代前半で、エスカレートすると症状が出る状況を避けようとする回避行動になります。

 

原因がわかる例ですが、大人になっても歯医者さんを怖がる人がいます。

幼児期に歯医者さんで、とても怖い思いか痛い思いをした経験があります。

歯科医院に行く前から怖さ、予期不安があったり、診療台に上がる前から体がかたくなったり震えたりされます。

 

幼いときのトラウマチックな体験によって、成長しても同じ状況で心身に恐怖の反応を起こします。

あがりが、演奏や歌以外のところからくる恐怖のこともありえます。

本人にとって感情的身体的に極度の負担となったことは、自覚なくても心理的な怖さが体に症状を表します。

 

社会不安障害でもあがりでも、アルコールを飲むと一時的に緊張が和らぎますが、量が増えてアルコール依存症になる危険があります。

 

なぜ、本番で怖くなるの?

凍りつきー心理的脅威

人前で歌ったり演奏する前、緊張する、交感神経系が亢進して興奮します。

ドキドキしたり手に力が入ったり、唾液や消化液が出にくくななったりします。

動物、人が非常時に闘うか逃げようとする「闘争、逃走」反応です。

 

もし、動物が捕らわれて食べられそうな時はフリーズ、その場にかたまります。

命を脅かす恐怖の場合、闘う逃げるより、考えることなくフリーズします。

これは、肉食動物は死んでいる動物を食べたがらないので凍りつく、仮死状態になり、万が一食べられても苦しまなくてすむための反応です。

 

凍りつきは、迷走神経という神経の一部の働きです。

迷走神経におけるポリヴェーガル理論(多重迷走神経論)は、1995年ステファン・ポージェス博士によって発表されました。

 

人の場合、その人が心理的な脅威を感じる場面で凍りつきます

ステージフライトは、ステージで奏ることを脅威とする、恐怖に対する神経の働きからきています。

交感神経系による興奮よりも、迷走神経による凍りつき、脳が感じる恐怖への反応です。

「あがりが克服できない【ステージフライト】ー凍りつき」

ステージフライトを繰り返す訳

ステージなどでミスしたなど強くネガティブな体験を、思い出させるようなシーン、

照明、音、動きや感情によって、不安感、恐怖を誘発します。

ステージフライトの本質は、引き起こした出来事にではなく、当人の中で起こる「出来事への反応」の方にあります。

 

ステージでの強い不安、体や手のかたまり、頭の混乱など演奏を邪魔するのは、無意識に蓄えられたネガティブな体験からくる症状です。

体の緊張や不安、ネガティブな思考があることはわかりますが、自分の症状と過去の体験との繋がりは無自覚です。

「なぜステージフライトは繰り返すのか?凍りつきの神経学」

あがりとステージフライトの境界

人、哺乳類であることは、危険な時、心拍を速めて気管支を拡張させ、消化を抑制して無駄なく酸素を抹消に送る、

つまり交感神経系の亢進が必要です。

いざという時には、爆発的な効力を持つ、人にとって不可欠な部分です。

(時にはステージで有用です。)

 

交感神経と迷走神経、互いに影響しあうので、交感神経、迷走神経からくる反応に境界がありません。

なので、「闘争逃走反応」と「凍りつき反応」、あがりとステージフライトの間に境界線を引けません

 

本番での緊張に薬は効くか?

あがり、恐怖症に使われる向精神薬

「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-5)によると,恐怖が公衆の面前で話したり動作したりすることに限定されている場合を「パフォーマンス限局型」としています。

 

・SSRI 選択的セロトニン再取り込み阻害薬

セロトニン量の低下を改善して脳内物質のバランスを整えていきます。

効果出現まで数週間~数カ月継続して服用する必要があります。

人前での発表などがうまくいくような成功体験を十分に重ね自信がついてくると,1年程度SSRIによる薬物療法を継続後,減量・中止が可能となることがみられます。

商品名)パキシル、ルボックス

 セロトニンについて「世界一不安を感じやすい日本人〜日本人があがるワケ」

 

・ベンゾジアゼピン系抗不安薬

神経をリラックスさせるGABA受容体の働きを高める。

強い不安を速やかに軽減させる効果が高く、苦手な場面に行く前に服用すると、リラックスしてそれに臨むことが出来る。

認知機能低下をきたし,パフォーマンスが落ちる可能性が考えられます。

長期的な服用は、集中力の低下やふらつきなどの副作用。

商品名)デパス、メイラックス

 

・βブロッカー

交感神経の働きを遮断し、心臓の病気や高血圧の治療にも用いられます。

アドレナリン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の作用を抑え、動悸や震え、口渇など身体の反応が抑えられる

およそ一時間前に服用すること。

不安をやわらげる即効性はない。

商品名)インデラル

薬をすすめない理由

個人的な意見として、ステージに上がるために頓用以外で薬を飲むことは、お勧めしません。

向精神薬は副作用が大きく、継続して飲むことで、耐性、依存性、耽溺性を生みます。

不安などを抑えますが、現実には10年以上、抗不安薬を飲み続けて薬をやめられなくなる人も少なくないです。

 

脳に作用して症状を抑えますが、脳が改善しにくくなります。

効かなくなって量が増えたり、止めるとドラッグような苦しい禁断症状(離脱症状)になります。

よくなるとは、根本的に解決して、薬に頼らなくてもステージに上がれることです。

 私が薬の治療をおすすめしない理由「心の病と薬」

 

ステージフライトの人に必要なこと

自分を安心する

心理的な反応であることを理解しましょう。

脳が怖いと感じていて、あなたを脅威から守るために、神経系が凍りつく反応、怖さから逃げるようしています。

自分が安心することが必要です。

 

実力が出せなかったり、また症状が出てしまっても、自分を責めないでいます。

もっと頑張らなくてはいけない、と考えなくていい。

怖さ、心理負担を抱えている自分を思いやり、自分に対して優しくいましょう。

 

続きは≫ ステージフライト回復編

《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

ステージに上がる音楽家のためのパーソナルトレーナー

思うように動かせない、痛みや悩みを抱えている音楽家の方が、

回復して能力を発揮し続けるよう、支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門のフィジカルセラピストに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ、英会話

詳しくは プロフィール

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