| 音楽家の体を改善 https://www.music-body.com 歌や演奏、音楽家専門パーソナルトレーナー Fri, 30 Dec 2022 06:41:35 +0000 ja hourly 1 https://www.music-body.com/wp-content/uploads/2016/02/cropped-サイト-32x32.png | 音楽家の体を改善 https://www.music-body.com 32 32 ピアノやギターの【腱鞘炎】レッスンは?手術する? 後編 https://www.music-body.com/technique-lesson/pain2/ Fri, 30 Dec 2022 06:22:59 +0000 https://www.music-body.com/?p=13485 ピアノやギター、ベース、管楽器、打楽器で親指の付け根が痛んだり、指を曲げる時痛い”腱鞘炎”

また、演奏で腕が疲れたり、肘が痛い、いわゆる”テニス肘”になることもあります。

こんにちは。

音楽家のフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

 

どうしたら傷めず弾けるでしょう。

腱鞘炎や肘の痛みの原因と対策について、後編です。

前編(原因)はコチラ

腱鞘炎を遠ざけて、うまくなる

姿勢から

多くの楽器は、指先だけが触れて操作をします。

体から指先までの間、体、肩、腕、手首、手は手綱、リードなので、どこもかたくない状態にします。

 

指を自由に動かせるために、手首を柔軟に使えること、そのために前腕からの楽器への位置関係で腕が動きやすいことが必要です。

腕が自由に動くために背中の筋肉にかたさがないこと、姿勢よく座ること、肩首がこらないことが大事です。

運指しやすい手

指は力を入れないほど、分離して細かく速く動きます。

今、エアで指をパラパラと動かすと、それぞれの指が独立、動きやすいのがわかると思います。

指を別々に細かく動かすには、小さな力で動かせます。

 

手は、物を掴んだり持ち上げるような、大きな力を入れることもできます。

この時、人差し指〜薬指か小指までの三、四指が同時に動くように、筋肉が働いて指が分離しにくい状況です。

演奏で指が精緻に動くためには、関節が屈伸しやすい、腱が関節で腱鞘内をスルスルと抵抗なく動くことが大事です。

 

指が動きやすいことと、指に力が入ることは別です。

演奏で指が動きやすいことは、力が入ることではなく、10本の形の違う指が、力を入れなくても動きやすいことです。

 

身につけた奏法によって、指が動きやすいか動きにくいかが違ってきます。

上記の手に負担のある状態での奏法になっていると、疲労や故障につながります。

 

楽器に余計な力を入れて動かし、楽器からの反力も大きくなります。

「動きにくいから指を動かせるように練習しよう、指をトレーニングしよう」と考えますが、初心者でなければ奏法自体を見直す必要があります。

指が動きやすい状態

小指側主導

小指側から楽器、道具へ手を持っていき、親指、人差し指に力が入らないようにします。

力が入る親指主導でなく小指側を主導にすることで、手や手首が柔軟なまま手指を使えます。

慢性的な尺側偏位ほか、前編はコチラ

 

自然な手の丸みを大切に

前腕から指先にかけての自然な丸みを帯びたカーブを大事にします。

手首は真っ直ぐか軽い凸で、曲げすぎない、反らさない。

手首が菅やネックで手のひら側に曲げていると指がピンと伸びて動きにくく、手が自由になりません。

前腕から手にかけて真っ直ぐか軽い凸
指が掌側へ丸まる、手の縦のカーブ
親指から小指にかけての手の横のカーブ

痛めない弾き方

ピアノ、ギター、ベースでのコツ

楽器別の簡単なポイントを少しだけ。

ピアノ

指を開いたり動かそうとせずに、手首から指を動かしたり傘を開くようなつもりで指を開くと、手が動きやすくなります。

詳しく≫ピアノで腱鞘炎を遠ざけて、弾きやすい手になる

 

ギター、ベース

ドアノブや鍵を廻す動きは、親指に力を入れて動かす動きなので、反復すると痛めます。

小指側を軸にしたページをめくるような動きで指弾きしたり、うちわを仰ぐように小指側を回転軸にするとスラップしやすい。

 

前腕から手を使う感覚があると、手が動きやすくなります。

ネック側も親指、人差し指に力が入らないようにするために、小指から指板に向かうように前腕から手を持っていったり、引き出しを引くようなつもりで押弦します。

 

押さえつけないで、移動しやすい、ビグラートやチョーキングなど細かいコントロールをしやすくなります。

動きやすくなる練習のコツ

楽器や道具に触れる指先が、ちょうどいい力具合で押せるように、力が入らない動きを身につけ直します。

テンポを遅く

小さな音で
弦楽器、管楽器などは音が出る音量

移弦、縦横など単純な移動から、音階や単純なフレーズへ

 

指関節を始め手首や肩、体から全ての関節が柔軟で屈伸しやすい状態で、優しく弾いて、楽に動かせるようにします。

尺側扁位がある方は、しばらくかかりますが気長に続けましょう。

難易度の高いテクニックや思い通りの音を出せることは、基礎的な動き方がいいことの上に成り立ちます。

腱鞘炎は手術で治る?

腱鞘炎の手術は、腱や腱鞘が腫れてスルスルと動かなくなったところの腱鞘を切ります。

すると、腱がスルスルと動きやすくなります。

日本整形外科学会「ばね指」治療

 

切っても同じ奏法をすれば、他の部分の腱と腱鞘が擦れて腫れて、また動きにくくなります。

手術した指の他の関節や、他の指まで腱鞘炎と切除を繰り返します。

ギタリストの井上堯之さんもその一人でした。

動画、最後に

《親指が痛い、肘が疲れた時の対策》

《演奏で手が痛い、指が痺れている時の休め方》

より弾きやすくなろうとして指を動かすトレーニングをされたり筋トレをされますが、残念ながら多くは逆効果です。

指のトレーニングをすることは痛める行為そのものです。

 

痛いな、疲れるな、動かないな〜というのは、動きにくいサインです。

痛いときは炎症を起こしているので、がんばらない。

優しく弾いて、楽に動かせる奏法を身につけるチャンスです。


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト、新堂浩子》

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

詳しくは プロフィール

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『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』 https://www.music-body.com/mental/german/ Wed, 30 Nov 2022 09:26:00 +0000 https://www.music-body.com/?p=13389 ドイツには、日本、韓国、中国からの留学生も多く、多くのアジア人音楽家がプロとして活躍しています。

なぜ、ドイツは、日本の音楽家が留学、活躍できるのでしょうか?

それは、ドイツ人は誰に対しても平等に接して、親切にすることができるからだそうです。

 

ドイツといえば、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン 、ヘンデルなど、多くの音楽家の生誕地。

多くの国立、州立の歌劇場に専属のオーケストラがあって、バレエ団もたくさんあります。

 

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

今回は、『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』という本を取り上げます。

ドイツを知ることで、日本にいて自分では気づけないことに、気づけます。

著者について

著者はキューリング恵美子さん。大学卒業後、会社勤務を経てドイツ人と結婚、30代でミュンヘン近郊に移住。

異文化の中で子育てに奮闘し、バレエ留学生のコーディネイトやライフアドバイザーとしても活躍。

ドイツ在住20年超の日本人女性の視点から、ドイツと日本の違いをみます。

『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』キューリング恵美子 小学館2021

 

「自分自身に満足しているか」という質問に対して、日本45,1%、ドイツ81,8%

「自分には長所がある」という質問では、日本人は45%で7ヶ国中最低、ドイツ人は90%以上でトップ。

ドイツ人は、ありのままの自分に満足し自己肯定感が高く、確固たる自分軸を持って生きています。

 

著者は、夫に「ベビーシッターを雇ったわけじゃない」と言われ、理解し合えず、長年苦しみました。

「良い妻」「良い母」だと認めたもらいたいと、思いつめていたことに気づいたそうです。

 

ステージⅢの癌で苦しんだのち、自分が他人の目が気にして「他人の人生」を生きていたことにも。

最後に「あなたはあなたのままでいいのです」と締めくくっています。

ドイツ人は「他人の目」を気にしない

女性ノーメイク、男性ノースーツ

通常、スーツを着てネクタイを締めて通勤している人は見かけません。 

「結婚式に行くときはきれいにしょうかなと思うからメイクするけど、普段はする必要もない」

派手なメイクをしている人や、オシャレで個性的なファッションをみかけることもあるが、常識や仕事のためではない。

 

公務員も全然ラフで、男性も女性も普段着で仕事をしていて、タトゥーやピアスをしている人もいます。

普段着とは、オシャレ着でもビジネススタイルでもない、家にいるときの服装ということです。

 

ドイツの女性は、まわりが自分をどう見ているかは問題ではない。

流行を追わない。着飾るよりも、着心地や機能性を重視している。

自分が他人にどう映っているのか、気にしないドイツ人の生き方が表れています。

裸を見せても平気

ドイツ人はサウナ好きが多く、多くは男女混浴で、バスタオルや手で体を隠す人はいません。

ご主人いわく、「人間のつくりは同じなのに、隠す必要なんてないだろう」

 

ドイツは、裸で日光浴や海水浴、森林浴やスポーツを楽しむ文化があります。

こうした文化にも、「他人の目を気にしない」「ありのままの自分を大切にする」生き方が表れているようです。

ドイツ人は休みを大事にする

短時間労働で経済大国

ドイツの労働生産性は日本の1.5倍。

日本人の年間総労働時間は1710時間、サービス残業を含めると3000時間以上の人は少なくない。

ドイツは1356時間です。

 

労働生産性(1人1時間に生み出すGDP)は、日本人47.5ドル、ドイツ人69.8ドル。

この生産性の高さは、経済成長や景気のよさにつながっている。

財政黒字で、新規国債は発行不要。

「休暇」のために働く

1年間の「休暇計画」を会社に提出し、有給は100%とる。

1年のうち通常2〜3週間の長期休暇をとり、旅行にお金を費やす。

30日の休暇手当は、月給の約半額の休暇手当がもらえる。

 

ゆっくり滞在する。メールを一切チェックしない、携帯電話が鳴ることもない。

乳幼児がいても普通に過ごせる施設や、預かってくれたり、若いアルバイトが子供の面倒を見てくれる。

 

毎年、長期休暇や短期休暇をとり、国内外のバカンスを楽しんでいます。

本当に休暇でリフレッシュするためには、頭の中から仕事を追い出す。

仕事に戻ったとき、新鮮な気持ちではつらつとでき、頭の回転も早くなり、集中力もぐんとアップするはず。

残業、職場の付き合い、なし

法律で労働時間が厳しく規制されている。

多くはフレックスタイムで、ピタッと仕事を終える。無駄な会議は嫌い。

 

就業前のカフェタイムでコミュニケーションをとり、就業後に飲みに行くような付き合いはない。

仕事の後は、地域の文化センターで汗を流したり、教会でコーラスなどを楽しんだりする。

休日は買い物よりアウトドア

駅や空港、飲食店以外は、日祝の営業は原則禁止。

平日も店は20時までに閉まる。コンビニなんてない。

キリスト教の文化的背景もあって、日祝は家族や友人、恋人などとゆっくり過ごす日。

 

「森の国」と言われるドイツは、本当に自然が豊富で静か。森や湖へ、ハイキングやサイクリングに行く。

ハイキングと言っても本格的な山登り。サイクリングも本格的で、赤ちゃん用ワゴンをつけて走れる。

犬を連れて散歩する人も多く、アウトドアを楽しんで、心身ともにリフレッシュする。

やるときはやる、休むときは休む

メルセデス・ベンツのスローガンは、「Das Beste oder nichts(最善か無か)」

金曜日や夏季・長期休暇には宿題が出ない。「やるときはやる、休むときは休む」

「生活のために働く」より「楽しく生きるために働く」と考え、仕事に人生の時間を奪われない。

 

家族との思い出や自分の生活を楽しむ。自分にとっての幸せを大事にしている。

上司の顔色を気にして仕事をする日本に対し、他人の目を気にしない働き方ができている。

メンタルを強くするドイツの子育て

自殺率の高い日本

15〜34才の死因、日本の1位は自殺で、G7の中でこれは日本だけ(厚労省2020年)。

自殺死亡率(人口10万人あたり)日本16.3人、英7.4人、独7.5人、仏7.9人という悲しい現実。

全世代で見ても、日本17.3人、独10.2人(2016年)と、日本人は自殺が多い。

 

若者の生きづらさには「自己肯定感」が大きく関わっているのではないか。

「自己肯定感」とは、生きる力、生を肯定する力そのものだから。

子供は優遇される

「他人に迷惑をかけるな」のような、大人目線で子供に注意やダメ出しはしない。

子供はあちこちでVIP扱い。エレベーターや電車、病院などの列で小さな子連れは優先される。

規則で、時間帯によって掃除機など騒音は規制されていても、子供の声はOK。

 

園児の声に「うるさい」とクレームが入る日本。

日本で、電車で乳児が泣かないよう、子供に声を出さないよう、肩身の狭い思いでベビーカーを乗せるお母さんは、信じがたい思い。

個性を重んじる

ドイツの幼稚園では、年齢によるクラス分けはなく、決められたカリキュラムもない。

登園したら一人ひとりが自由に遊び、子供同士が交流し、自由意志で好きな遊びができる。

けんかをしても止めず、激しいけんかになったら、言葉で話すよう促す。

 

著者から見ると、和の精神や協調性、勉強の基礎を学ぶ日本の教育は、子供は受け身になり、自分の意志を表現しにくい環境。

 

小学校は、子供一人ひとりの発達状態や学習テンポを重視していて、1年遅れで入学したり、留年することもある。

ヘルマン・ヘッセは1回、トーマス・マンは2回留年している。

 

学校のテストの答えは、記述式で、マルバツ問題や選択枝はない。

人前で話し、人の話をしっかり聞き、生徒同士が討論し合あう。

自分で考え、それを主張できることは、自己肯定感の高さにつながる。

 

ドイツの教育システムは、小学4年生で将来の進路を決める。

職業訓練コース、事務職や専門職になるためのルート(日本だと高校から専門学校に進学)、大学進学するコース。

 

勉強が嫌い、苦手な子もいるのが現実で、誰もが勉強、進学を強制することは、子供にとっては苦しい。

成績だけで評価せず、それぞれの長所を伸ばしていくことで、ありのままの自分を肯定することを後押しする。

 

他の子と比べたり、「成績が悪い」と子供を責めると、自己肯定感を下げてしまう。

親の希望を「子供のため」と押し付けず、本当に子供が望んでいるのか、プレッシャーをかけないことが大切。

子供との時間、夫婦だけの時間を持つ

学校の授業時間は短く、部活動はなく、塾通いは少ない。

宿題や習い事をしても、両親はできる限り子供と触れ合う時間をとる。

無理をして完璧な親を目指そうとせず、家政婦や外注システムを安価で取り入れ、ストレスのない育児をする。

時間に追われストレスを抱えて育児をすると、子供に伝わり、自分が親に迷惑をかけていると感じてしまう。 

 

子供が生まれても、互いをパパママと呼び合わず、二人の関係を変えようとしない。

二人きりの時間を大切にして、ベビーシッターを頼んで、夫婦だけでコンサートや映画、食事に行く。

ドイツは常識として刷り込まれた「夫像、妻像」ではなく、夫婦のあり方は、それぞれが話し合う。

 

子供は幼い頃から1人でベッドで寝、親が二人で出かけるので自立心が育まれる。

「子供と親は別人格」という考えが当たり前。親が自分の楽しみや生活を尊重する。

 

小さいころから子どもの意見を尊重し、親が子どもを、自分のもののように考えることもありません。

親子が互いに自立した関係を築けているから、子供への過干渉や支配が過ぎる「毒親」は、ドイツではあまりない。

子供は、無意識のうちに親をコピーしていくともいわれるので、子育て中も親が「自分の人生」を生きることが大切。

古い物を大事にする、エコ

キッチンではすべての物、調理道具や調味料まで収納する習慣があり、何十年も物を大事に使うので、収納できないもの、新しい物は買わない。

物欲に振り回されず、無駄に消費しないのは、環境への意識が高いせいもある。

 

ドイツはエコ先進国。自然豊かな環境が身近にあり、環境問題への意識が高い。

自分軸で生きる生き方は、自分自身を大切にする。

その延長線上に、自分のまわり、ご近所、地域社会、最終的に地球を大切にすることにたどり着く。

 

一方、日本では、最新の電化製品、衣類、さまざまな品に消費意欲を掻き立てられます。

ストレス発散のためにブランド品や服を買ってしまう人も少なくないようです。

「ありのままの自分」を認めてあげることができれば、物に囲まれていなくても、自分を肯定できるはずです。

みんなが助け合う

困っている人を見かけたら手を差し伸べるのが、ごく普通です。

ご高齢の家の雪かきを近所の人がする、隣近所で助け合うのは、当然のこと。

旅行に行くときは隣の家の人が、猫の餌やトイレ掃除をやってくれ、写真まで送ってくれる。

 

自分も頼まれごとをされれば、お互い様で快く引き受け、お金のやりとりは発生しない。

見ず知らずの人にも、親切に声をかけ、人に手を差し伸べている場面もよく見ます。

 

日本人は、見ず知らずの人には冷たく接しているように感じられる。

困っている人を助けたくても、周りの目にどう映るかを気にして、(自己肯定感の低さゆえ)行動に移せないようです。

 

自己肯定感が高い、自分の権利や存在そのものを肯定できる人は、他人の権利や存在も肯定します。

周囲の目を気にすることなく、人に親切にできます。

ドイツ人は、誰に対しても平等に接することができるのです。

音楽家や他の本から

ドイツ留学体験者から

ドイツのハレにあるマルティン・ルター大学の大学院に留学された、ピアニストの鈴木萌子さんから。

先生が休暇を大切にとられて、ピアノから離れることを話されています。

竹内幸哉さんラジオ番組『良い音楽には余裕と休みが必要だということ』続・鈴木萌子 ハレ留学

ドイツ在中のオペラ歌手、車田和寿さん動画『演奏家が風邪でキャンセルするのはプロ失格ですか?』より

ドイツは病欠の制度がしっかりしてるので、有給を使うことなく休める。

日本における、風邪や病気にかかることを、自己管理不足やプロ失格というプレッシャーによって、音楽家が必要以上に苦しむ。

誰だって予想もしない病気になる。そういう社会は、音楽家にとってマイナス。

ドイツの学校に行かれた息子さんが、日本の学校も体験されて。

ドイツで活躍中のヴァイオリニスト

池上彰さんの本

『本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」』2021 池上彰マライ・メントライン増田ユリヤ 著

日本は引きこもり100万人、中年も多い。

ドイツの学費は大学まで無料。子供のいる家庭へ支給が大きく、ホームレスや引きこもりはいない。

ドイツの投票率は70%、日本は30%。「VERY」は現代版良妻賢母。

最後に

私たちの考え方、自分が考えたり感じたりすることの基準は、育つ社会や教育の中で植え付きます。

それが、考え方の基本的な物差しとなり、自動的に思考します。

自分が持つ価値観は、絶対的に正しいものではありません。

 

日本人は、数字や肩書で人を計ってしまい、自分の成績や容姿を人と比べて、自分を低く考えてしまいます。

自分の考えを押さえ、空気を読んで人目を気にして、繊細さんになってしまう人もいます。

 

誰かに認められなくても、自分がありのままの自分を認め、自分を尊重する。

かつ、人の意見や存在も尊重する。そんな姿勢をドイツ人から学べたらいいです。

もちろん、すべてを受け入れる必要はありませんし、日本人にもいいところはあります。

 

それでも、休みをとることは、すぐにできます。

きちんと休んで、ルーチンや「やるべきこと」を追い出して、自分を開放してあげてください。

できれば、自然に触れたりひたったりしてください。

そうすることで、音楽を続けるのが辛くなったり、手やメンタルを故障したりすることは防げます。

 

人と比べることなく、あなた自身が自分の価値を尊重してほしい。

ありのままの自分を肯定するメール講座↓


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

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演奏家の手荒れ対策【ハンドクリーム、指先・指関節の割れ】 https://www.music-body.com/body/hand-2/ Mon, 07 Nov 2022 07:18:23 +0000 https://www.music-body.com/?p=13359 秋になると湿度が下がってきて、手もカサついてきますね。

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

楽器との摩擦、木製のネックやスティックで、手があかぎれたり指先、関節の皮膚が割れたりします。

手の乾燥対策やハンドクリーム選びのコツ、爪や指関節の割れ対策についてまとめました。

手荒れの原因と対策

乾燥から守る

手の表皮は、皮脂腺から分泌される皮脂と汗が混じってできる皮脂膜が覆っているので、皮膚が潤っています。

掌側には汗腺があるので、緊張すると手に汗にぎりますが、手の甲側には、汗腺は少なく皮脂腺も他の部位の皮膚より少ないです。

空気の乾燥によって、皮膚の水分や皮脂腺から出る皮脂が奪われて、潤いが減り手が荒れます。

 

乾燥と寒さゆえ、露出してる手は荒れやすく、対策としては手の保湿と保温です。

紙や洗濯物などの乾燥もきついので、手が荒れる前、手洗い後早めに、クリームなどで手の甲や指先の保護をします。

冬の外出時は手袋、ぬるま湯で手洗い、食器洗いするなど保温も、手荒れを減らします。

洗いすぎない

新型コロナ、インフルエンザなど感染対策に手洗いは大切ですが、ボディソープで洗うと手から皮脂を奪ってしまいます。

シャンプーや食器洗い用洗剤など合成洗剤も、油汚れを落とすので、手が荒れます。

 

純石鹸やマイルドな洗剤を選んで、少量使うようにしてください。

食器洗いのときは家事用グローブをして、手を保護することをおすすめします。

熱いお湯も肌を乾燥させますので、長時間のお風呂や、熱い湯での手洗い、食器洗いは避けます。

タオルで擦らない

手を洗った後は、すぐにタオルなどで水分をきちんと拭き取ります。

濡れたままにしておくと、水分が蒸発、乾燥して手荒れが悪化しやすくなるからです。

拭くときもタオルなどでゴシゴシとこすらず、水分を吸い込ませるようにやさしく拭きます。

 

手の表皮の一番外側にある角質層は、保湿やバリア機能を担います。

皮膚が乾いて角質層がかたくなる(カサカサになる)と、保湿やバリア機能が損なわれ、悪化するとひびやあかぎれになります。

乾いた布やペーパータオルで強くこするのは避けます。

 

タオルもパリパリに乾燥しているものよりも、ふんわりしているもののほうが、皮膚を痛めません。

乾燥機でタオルをふんわり乾かすのもおすすめです。

ハンドクリーム

ハンドクリームは

普通のハンドクリームには、グリセリン、ワセリン、ヒアルロン酸、セラミド、香料など、商品によって違いますがさまざま成分が入ってます。

色々な目的で成分が入っていますので、目的に合わせて使うといいです。

 

手荒れ防止に大切なことは、潤いを逃さないよう表面を保護することです。

ベタベタするものは手の甲側だけ塗ればいいですし、商品によってはベタつかないものもあり、すぐに楽器を弾けるものもあります。

 

ハンドクリームの多くは塗ってもすぐに落ちやすい。つまり、表面の保護効果が長く効きません。

塗ると表面はしっとりしますが、実際に含まれた成分に効果があるものは少ないです。(正直、化粧品と同じでほとんどありません)

おすすめはワセリン

ハンドクリームにおすすめするのは、ワセリンです。

ワセリンは、石油から作られた高純度のもの(純度が高いとは、他に成分を含まないという意味)です。

リップクリームやハンドクリームなどの油分に使われています。

 

ワセリンは、皮膚に油の膜を貼って表皮をカバーし、長時間、手の水分や皮脂を逃しません。

手を水で洗うとき、ワセリンは水をはじくので、保湿効果がハンドクリームよりも高いです。

 

白色ワセリンや、ヴァセリン(ユニリーバ・ジャパン社)↓など、ドラッグストアで買えます。

防腐剤無添加、無着色、無香料。コスパ高く、リップクリームとしても使えます。

ヴァセリンはサイズが色々あり、40gなら持ち歩けます。

尿素入りは使い続けない

ひび、あかぎれ、しもやけ、手湿疹などひどい手荒れに、尿素を配合したハンドクリームを使うと、よい働きをしてくれます。

尿素は、皮膚がガサガサしていれば、角質がゴワゴワした状態で、この角質を溶かします。

ひざやひじ、かかとなど角質が硬くなっているところにも使えます。

 

尿素の働きで、肌が柔らかくなり角質が固まった状態から脱します(ピーリング)。

しかし、そのまま尿素を使い続けると、まだ十分に育っていない表皮に未成熟な角質が増え、角層のバリア機能は低下し、肌の乾燥をもたらします。

尿素入クリームは、ガサガサが改善したら、使い続けるのは避けた方がよいです。

 参照「尿素のメリットとデメリットは?」

爪も保湿

爪は、手の表皮の一番外側にある角質層がかたくなったものです。

なので、手の皮膚と同じで乾燥には弱く、乾燥が続いて2月頃になると、爪も割れやすくなります。

爪が割れる人は、爪と爪周囲にもクリームを塗って保湿してください。

指先指関節の割れ

指先のワレには

皮膚が割れてしまう人は、ヒビケア等のひび・あかぎれ治療薬があります。

指先、親指の角などがひび割れて痛い時は、ロコスキンエキバンなど液体接着剤が効きます。

親指の角など力が入って応力がかかるところは、割れやすく閉じにくいので、液体接着剤で引っ付けます。

指関節のパックリわれ

指関節の皺に沿って、パックリ割れてしまう場合。

クリームで保湿していても割れることがあり、なおりにくいです。

原因は、寒冷や血液循環が悪いなど言われていますが、指の変色や痛みがあることがあります。

 

キズパワーパッドなど貼ったままにできる絆創膏がお薦めです(類似商品でも可)。

傷を覆って体液を保ち、乾かさないことで傷を治します。

指関節に巻きやすい商品も多く、そのまま手洗いでき、お風呂にも入れます。

商品の取扱説明書をきちんと読んで、使ってください。

 

▶音楽家に起こりがちな体の不調


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

詳しくは プロフィール

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演奏でミスを怖れていませんか? 理由と対策 https://www.music-body.com/brain/mistake/ Wed, 21 Sep 2022 07:36:51 +0000 https://www.music-body.com/?p=13256 ミスをしないよう目指して練習していませんか?

こんにちは。

ステージに上がる音楽家のフィジカルセラピスト新堂浩子です。

 

実は、私たち日本人は、他の国の人に比べると、異常にミスすることを恐れています。

でもそれでは、せっかくのコンサートを楽しむことができません。

ドイツ在住のオペラ歌手、車田和寿さん、ピアニストの反田恭平さんの意見を交えてお届けしますね。

※ミスタッチをなくす方法の記述ではございません。

演奏でミスを怖がる理由

ミスしたら音大に落ちてしまう?

まずは、ドイツ在住のオペラ歌手、車田和寿さんの動画、『演奏家の失敗!許せますか?気になりますか?』より。

 

1’30″~「一音でも間違えたら、受験やコンクールで落ちてしまう、と言われます。試験官でないからわかりませんが、小さい頃からミスしたらダメな演奏というプレッシャーにさらされることになります」

学校教育においても、100点満点から減点されます。

間違ってはいけない、間違うことは恥ずかしいという概念が植え付けられます。

このように、音楽や学校など教育の中で、ミス、間違うことに対して、大きく恐れを持ちます。

日本人は遺伝子レベルで怖がり

日本は、自然災害が多い国です。

地震、津波、台風、火山噴火、最近では大雨も脅威となっています。

自然災害が頻発する小さな島国で生き残るためには、警戒心が必要だったと考えられています。

 

そのせいかどうか、遺伝子レベルで日本人は怖がりです。

脳内の神経伝達物質として働くセロトニン(5-HT)は、別名“幸せホルモン”と呼ばれていて、精神を安定させる働きがあります。

日本人は他国の人に比べて、このセロトニンが少ないのです。

 

セロトニンには型が5種類あり、遺伝子の型を大きくLL型とSS型で見ると、

LL型;非常に楽観的な性格、ストレスを感じる状況でも精神的に安定

 米人32% 日本人1.73%

SS型;慎重で不安を感じやすい

 南アフリカ人28% 米人45%  日本人80%

 

つまり、アメリカ人と日本人が100人ずついると、非常に達観的なアメリカ人は3割いるのに、日本人には2人もいない、不安を感じやすいアメリカ人は半分もいませんが、日本人は8割もいます。

 

日本では国民のほとんどが、楽観的でいられず、慎重で不安を感じやすい。

ゆえに、正確でなくてはならないと考えます。

日本では電車が来る時間が正確で、それに他国の人が驚くのも、うなづけますね。

 

セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンなどの感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。

生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などの生理機能と、気分障害・統合失調症・薬物依存などの病態に関与しています。

完璧主義

一般的な日本人の中でも、よりミスを許せないのが、完璧主義者です。

完璧主義の人は、完全無欠であろうとし、それを証明したい、人に認られたいと考えます。

コンクールで一位になりたがります。

自分がミスをすることを受け入れられず、ミスすることを許せません。

ミスを怖がっていると

伝わるものがない

音楽の本質は、作品を味わい、楽しむこと。

音楽は、言葉にならない感情、情緒を音で表します。

悲しみ、嬉しさ、気持ちいい、楽しい、怒り、どうしようもない想いを、慰めたり、共有したり、発散したりします。

曲に込められた作り手の想いを、楽器や声で奏でて、聴く人とわかちあって一緒に楽しむことではないでしょうか。

 

ミスを恐れていると、演奏の目的が「ミスのない演奏をすること」になってしまいます。

それが目標になってしまうと、余計、ミスが恐くなってしまいます。

ミスなく弾けても、想いや風情が伝わらなければ、機械の演奏と変わりません。

 

完璧主義だと、自分がホールで聴くときも、作品で伝えたいことよりも、”完璧な演奏”に感動してしまいます。

自分がミスすることに厳しいと、人の演奏を聴くときに、ミスに厳しくなります。

人にもノーミスな演奏を求めてしまいます。

ミスも音楽の一部

前述の動画の中で車田さんも、

「ミスを恐れていると音楽の本質的なところが見えなくなってしまう。音楽が窮屈で退屈なものになってしまう。

ライブには、生の演奏に加え、録音にはないものがある、演奏家と聴衆の心のやりとりは何物にも変えがたい」

 

また、ホロヴィッツはミスタッチの多さを指摘されると、「それも音楽の一部だ」と答えたと。

音楽にはミスしない演奏よりも、大事なことがある、と言われています。

反田恭平さん曰く

反田恭平さんはラジオで、「日本のアーティストは基本的に億劫です。自分の我を出すのは苦手、イマジネーション能力、何を届けたいのかわからないとよく言われる」

動画ラジオ番組 Growing Sonority「演奏スタイルにもお国柄はある?」より

ミスを怖がらなくなるには

曲に共鳴する 

曲は何世紀も前に書かれたり、1960年代70年代のものだったりします。

作り手の感情や情景、意図を汲み、曲を深く理解できるといいです。

今は、作った音楽家の時代背景や境遇、さまざまな情報を、本やネットで知ることができます。

また、他の人の録音や意見など、たくさん参考にできます。

 

ライブなら、今この瞬間、その曲を奏者とお客さんと一緒に楽しんでいます。

たとえミスがあっても、響きで伝わるものがあれば、「感動した。いい演奏だった」「楽しかったな」という感想の方が優位で、ミスなんて気にならないでしょう。

感性を磨く

あなたの今の年齢、感性、肉体、技術でもって、譜面(や耳)から響きにします。

どれだけ作り手の意図や感情を汲めるか、どのように響かせるかは、その人の感性によります。

難しいですが、どうしたら作り手の気持ちに少しでも近づけるのか、考えてみるといいでしょう。

 

あるいは、なぜ、その曲を弾きたいのか? その曲のどういうところが好きで、何に惹かれたのか? 考えてみるといいです。

同じ人でも20代、50代、80代と年齢が進むと、曲の解釈、響かせ方が違ってきて面白いです。

セロトニンを増やす

どのくらい効果があるかはわかりませんが、神経質にならない方法として、参考までに載せます。

セロトニン研究の第一人者有田秀穂氏(東邦大学名誉教授)『有田秀穂先生に聞く「セロトニン」で毎日元気に過ごす方法』より

 

1、太陽の光。朝起きたら太陽の光を浴びること。

2、ウォーキング、意識的な深呼吸などのリズミカルな運動。ウォーキングに集中すること。通勤時の歩行ではだめ。

3、おしゃべりやスキンシップなど、グルーミング行動。

最後に

人間は誰も完璧ではありません。ミスをする生き物です。

ミスがあっても、いい演奏はできます。

 

完璧主義でミスすることを受け入れないと、自分はまだ不十分と自己批判し、息苦しい人生になってしまいます。

誰しも不完全な部分があることは当たり前です。

すべての人が完全でないように、自分に厳しくせず、ミスをする自分を受け入れてください。

 

完璧さよりも人間らしさ、人の弱さや優しさ、そういったものを音楽で伝えられたら、すばらしいと思います。

 

完璧主義は自分で気づきにくい。メール講座の中に詳しく書いています。

📩メール講座 あがり改善「自分を大切にする」


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

詳しくは プロフィール

 
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『室井摩耶子 百一歳のピアニスト』矢島多美さん著 https://www.music-body.com/blog/mayakomuroi/ Thu, 18 Aug 2022 09:12:57 +0000 https://www.music-body.com/?p=13090 この本を読みたいと思ったのは、昨年、百歳の室井摩耶子さんの『月光』を聴いたとき、“ぬくもり”を感じたから。

それまで聴いた『月光』は、”冷たさ”を感じるイメージでした。

 

人は誰でも老いる。

でも、演奏家が老いて101才になるって、どんな感じなんだろう。

4月に山野楽器銀座店でこの本を目にして、購入しました。(4/18101歳のお誕生日直前に発売)

 

ここでは主に、室井さんの体についての記述を時代背景とともに、本からさらいます。

ベートーヴェン、バッハ、シューベルト、ドビュッシー、サティ、ルービンシュタイン、バックハウスetc

室井さんによる曲の解釈やピアニズム、著者による音楽に関する表現を、私が歪曲して書いては申し訳ない。

なので、是非本を買って読まれることをお奨めします。

著者、矢島多美さん

矢島多美さんは武蔵野音大卒業後、『ムジカノーヴァ』編集部で室井さんを担当されていました。

フランス、ソルボンヌ大学音楽学科に留学、夫で音楽評論の矢島繁良創設の日本ピアノコンクール運営、『ル・ピアニスト』の編集に関わる。夫の遺稿集、短編小説を執筆。

室井さんの私設秘書をされていらっしゃいます。

この本は、室井さん84歳から100歳まで、主にコンサートを中心に記したご本人納得の公式評伝。

 

ホロヴィッツにワンダ夫人がいたように、室井さんに矢島さんがいたのかも知れない。

室井さんは、矢島さんに「自信がない」「弾ける気がしない」と漏らしています。

ホロヴィッツ夫妻は仲は悪かったにせよ、ホロヴィッツは自分の演奏に、トスカニーニの娘だったワンダの感想が必要でした。

 

ドイツ語「ムジチーレン」とは,音楽するという概念、音楽語(する)、解釈(する)、音楽文法、演奏をつくる、という意味だそう。

本文よりー
60才でヨーロッパを畳み、日本に戻ってきて以来、「ムジチーレン」は89才までピアニストの道を歩ませた。トークコンサートという表現形式を編み「ムジチーレン」という営為を見える形で具現化してきたと、思う。

『室井摩耶子 百一歳のピアニスト』より

大正、音楽教育始まる

「ねえ、83歳だって、できるのよ」「次は前屈よ。見てらっしゃい」室井は躰を前に倒すと、右手の指先を左足の親指に届かせ、左腕を後背の天へと突いた。

 

室井摩耶子は大正十年(1921年)東京の田端で生まれた。2歳のとき起きた関東大震災の災禍をはっきりと記憶しているはずはない。
昭和元年、小田急線が新宿と小田原間を通る。

昭和二年、室井は成城学園に入学し昭和六年に成城の現在の処に、一家は落ち着いた。
最初のピアノの手ほどきは作曲家弘田竜太郎の妻でピアニストだったマリ子夫人に、10歳からドイツでクロイツァーの下で研鑽を積んだ高折宮次に師事した。

当時の音楽教育ではめずらしいことだそうだが、小学五年から和声、対位法を作曲家岡本敏明に習い始めた。幼稚園ではトミック教育を受けている。

 

父はラジオ制作の事業を興していたことから、室井は幼少期から蓄音機やラジオが身近にあったという。
女学生のとき、東京帝国大学生だった兄が死んだ(入ってすぐに結核のため)……

ピアノの音

「ひとの指は、もともと掴むものなのよ。拡げる方が力が要るわけね。この自然をピアノを弾くのに、利用するわけよ」

「1と4はこうして前に出るだけなのよ」と弾いてみせた。
「2と5にするのは、親指の音が出すぎるからですよ……指番号は響きのためにあるわけですからね。ペータース、ブライトコップも2、5ですが、それらだってベートーヴェンが譜ったものでないとしたら、ピアニストは響きのために考えるものですよ……」

20代、終戦

女学校を卒業すると同時に結婚の準備をすることが一般的だった当時、室井はピアニストになろうと夢中で、クロイツァーの下で研鑽を積み研究科を卒業した。(東京音楽学校(現・東京芸術大学音楽学部)卒業後、同校研究科)

翌1945年、終戦の年の1月、その頃クラッシックの殿堂、日比谷公会堂での日本交響楽団定期講演での協奏曲公演の最終日、日比谷一帯、空襲に見舞われた。

 

「学徒動員で出兵していく学生さんに旗を振ったときは、心震えました…あんなに大勢の若者が死にいくんですよ!」
「お友達のところに向かったんです。浅草寺前を亡くなった人たちが、次から次、リヤカーで運ばれてくるんです」
音楽学校の友との別れを短く語ったこの時を限りに、室井は二度と先の大戦の悲惨な記憶を展かなかった。

30代、ドイツへ

「ユネスコが催した『モーツァルト生誕200年記念祭』の日本代表のお話を機に、ドイツで勉強しようと思いました…どうしてと訊ねますよね。そうです。リサイタルはいつも満席で、成功していたのですから、疑問はもっともです。
わたしにはなにか足らない、焦燥感に駆られていたんです」

憧れのピアニスト、7歳年上の原智恵子はパリ・コンセルヴァトワールを卒業。
戦前にヨーロッパの土を踏んでいた演奏家たちは、戦後、真っ先に演奏活動を展開していた。豊増昇はバッハ、安川加寿子はショパンの演奏会。
室井の二十代を覆う戦後、ヨーロッパは隔たってしまいすぎた。

1950年代に入り、フランスからラザール・レヴィ、コルトー、ドイツからバックハウス、ケンプが来日。
任についたばかりの現在の日本音楽コンクール審査員、東京藝術大学の職など、すべてをなげ打って、1956年ウィーンへ。

奨学金の関係でベルリンに移り、ロロフ、ケンプの下で研鑽ぶりを自著『ピアニストへの道』で克明に、感動的に綴っている。
5年後39歳の室井は、ヨーロッパデビューを果たす。ベルリンでの初リサイタルでの成功後、ヨーロッパで演奏活動を展開していく。

ドイツにいた頃(美人!@@)

50代、ばね指

50代に入るやいなや、娘のピアニスト人生を見届けたかのように母が逝った。
10才下の弟は当時スイスの大学で職についていた。ひとりになった80歳の父を思えば、室井は迷ってはいられなかった。

日本とヨーロッパを行き交うことが頻繁になり、母の死から二年後、ばね指になった。
5年間リサイタルは開かず、勉強に当てた。

この間、楽譜をじっくり研究したと、再出発のリサイタルのプログラムに綴っているが、それはその後の活動を下支える財産になったと云えるだろう。
ドイツで活躍中だっただけに深刻だったはずである。

母の死から気持ちが帰国に傾いていたはずだったが、室井はふたりのバッハ演奏のビヒト・アクサンフェルト女史とウェーバージンケ氏の門を叩いた。

60代、帰国

1982年、室井は20年に渡るヨーロッパでの演奏活動を畳む。
シューベルトは60才の室井が猛烈に取り組んだ相手だ。

室井は、帰国時、熱い思いで引き寄せたシューベルトを十年の歳月を費やして、コンサートに載せたのだ。
「頑張りのきっかけは、ヨーロッパでギレリスを聴いたときだった。年取っても変われると思った。力が体中を駆け巡りました。ギレリスに本当に力づけられたんです。」

戦前から活躍していた大ピアニストたちの訃報が届くようになった。
室井の敬愛してやまないケンプは平成3年に没した。その翌年、父良平が百一歳で亡くなった。

70代、肺癌

70歳のとき、室井の躰に病が憑いた。肺癌である。手術はスケジュールのため三ヶ月先に伸ばしたが、成功し、癌の再発に見舞われていない。

平成八年(1997年)、こけら落としした東京オペラシティコンサートホールに室井は登場した。戦前から日比谷公会堂、戦後、東京文化会館など、日本の代表的なホールで演奏してきた室井にとって、平成生まれのステージで、教え子の井上道義の指揮でピアノ協奏曲を弾くことは感慨ひとしおだった。

80代、ロックドフィンガー、白内障

元がん患者は多忙で、アンチエイジングのため、ジムとかエステとかには行くことはしていない。マッサージも受けていない。

ストレッチ体操は、彼女なりに励行している。ピアノを弾くための体躯のしなやかさを厳しく保っている。
運転をしない室井は、歩くことが多い。84歳にして薬は一錠も飲んでいない。

 

85歳の姉のコンサートにスイスから駆けつけた弟はコンサート4日後に亡くなった。
弟の死はピアニストに二回めのモーツァルトコンサートを開かせた。

 

87才、転んで足首の捻挫をする。
「コピー用紙が落ちているのに気づかず滑っちゃった。病院、いかないわよ。安静にしてればいいことなんだから」

一週間ほどして、深刻な本体が明かされた。
「指が動かないのよ。指がだらりとしてしまっていてね、考えたことが伝わらないっていう感じなのよ」

病名は「ロックドフィンガー」だった。腱に神経が癒着して、脳の指令が伝わらない。
直ちに手術が施された。四ヶ月、公演延期の断が下された。
公演延期で手にした四ヶ月を、バッハの新しいかおづくりに当てるのだった。

ロックドフィンガー療養中、白内障の手術に踏み切った。
「わたしは日帰りでいいと思ったんだけどね」
退院の準備をしていたときだった。「お化粧したいんだけど」「いつからできるか、訊いておきましょう」「そうじゃなくて今よ」絶句した。「昨日、手術したのですよ」

立て続けに肋骨を痛めていたが、それをものともせず、『フーガ』部の最後のオクターブ奏法を懇親の気力で弾き切り、室井は87歳のピアニストざまを、見せきった。

 

土地の分割問題が持ち上がっていた。異郷で未亡人となった弟の妻のことを考えれば、旧居を分断する。
ピアニストとしてあと何年、弾いていけるだろうか。ついに、室井はピアノ室を建て直すことにした。

89歳、室井はハイドンの造形の旅の入り口に立とうとしていた。
実際に新居が建ち、引っ越しをするのは、1年半も先のことである。室井はひたすらピアノ室に籠り続けた。

 

「門扉のことろでつんのめったのよ。右側の顔から地べたに打ち付け、左手が地べたをついたのよ。手首が動かないのよ……もちろん、整形外科にいったわよ。ひびは入ってるかも知れないが、骨折はしていないという診断。腫れ上がって、痛いわよ……安静にして、晴れが引くのを待つわよ。正月明けにラジオで弾くでしょう」
28日、玄関で室井は指を軽く動かして見せた。しかし、手首はギブスの中。正月になると、指の包帯は第二関節まで降りていた。

 

コンサートで弾く、シューベルト『111』。
低音部を司る左手の手首が万全でないことから、軽いタッチに終始せざるを得なかったところのあったにせよ、繰り出した音色とペダルのテクニックの相乗効果によってホールを満たした響きは、豊穣の一言に尽きた。

新居は、室井のこれからの生き方に即した、とてもプレーンな造り。
30平方メートルのピアノ室はレモンイエローで統一された空間の、まぶしいほどの明るさ。
「わたしは、あと十年は生きると思う」

 

室井は、とにかく痩せた。背中上部のラクダの瘤のように盛り上がった筋肉のを見つけた聴衆は、言葉を失った。

ピアニストはピアノの椅子に腰かけた。高さは低めだ。そして両手が鍵盤に……
『エリーゼのために』の出だしの旋律を奏でる右手の手首が、俗に鎌首をもたげた蛇のように持ち上がったのだ。室井で聴いたことのない、立ち気味の発音、そして鮮明な音色は、『エリーゼのために』の愛らしくも流麗な音楽の流れを堅くして、モーツァルトの『アダージョ』の冒頭の響きにも匹敵する、怖い物語を展いた。

90代、大腿骨骨折、誰も気づかなかったが

調布の杏林病院から、室井は大腿骨骨折で手術しなければならないという電話がはいった。庭で水やりをしていたら倒れ、救急車で運ばれたという。

96歳ははたして全身麻酔から目覚めるだろうかと、心配が非常に大きかったが、麻酔から目覚めてからの室井は、それ以上の驚きだった。

翌日の午後、室井はすでにリハビリ室にいた。
室井はリハビリのための転院を固辞した。室井には帰宅を目指させたスケジュールがあった。

 

個室のテレビの音が大きすぎるという苦情があった。嘘のような話だが、誰も室井の耳が遠くなっていることにわたしたちの誰も気づいていなかった。

 

退院してから、アンコール曲、CDのために仕上がっていたサティの数曲ならいつでも弾けるまでに、ペダルを踏む足を取り戻した。
日常生活でも、室内では歩行器なしで歩いた。そばには置いてはいたが。

 

 バッハの場合は、手をはなしてペダルで音を保つのではなく、手でちゃんとおわりまで弾いている
室井が赤字で示した『平均律曲集第一巻 第一番』最後の和音の弾き方を思い出す。
百歳近くのピアニストの、音がホールに吸い込まれるまでと、ゆっくりゆっくり鍵盤より離していく手は、今、こうして演奏していること、演奏できることへの思いを表しているように、映るのだった。

100才、暗譜で

百歳お祝いコンサートは、コロナで人数制限。昼、夜の2公演になったが、室井はそれをこなした。もっとも楽屋にベッドを用意してだが。

百歳は、『エリーゼのために』を暗譜で奏でた。

後記

長く生きていると、家族を看取ることになる。兄、母、弟、父。

師や学友、同盟も。家族と過ごした家も。

悲しみや寂しさも、ピアノに取り組むことで過ごしてきたのだろうか。

 

私は、音楽家の肉体の中に、哲学があるような気がする。

ベートーヴェンであれば、恋愛をして、病、難聴を患って遺書を書き、苦悩しながらも作曲し、そして死ぬ、という、人生そのもの。

ピアニストは音で、作曲家たちのムジチーレンを伝えるのだろう。

 

室井さんは、作曲家たちの作品を「伝えたい」と、トークコンサートで語り、弾いて、ムジチーレンしてこられた。

高齢になると、背中が曲がってピアノでの姿勢も変わり、手に力が入らなくなる。

力が入らないから、この上なく美しい『エリーゼのために』を奏でられるのだろう。

わたしが観た『月光』は、この1分半のNHK world newsの動画の最後の部分。https://www.facebook.com/watch/?v=897688937468532

>音楽之友社『室井摩耶子 百一歳のピアニスト』

>アマゾン↓

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

音楽家の不調を根本的に神経系から改善して、心技体トータルで向上していけるよう支援しています。

19年医療に従事したのち音楽家専門パーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、大人から始めたクラッシックバレエ

詳しくは プロフィール

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音楽家の身体技法ー姿勢がよくならない訳 https://www.music-body.com/body/technique/ Sat, 23 Jul 2022 07:31:17 +0000 https://www.music-body.com/?p=12993 こんにちは。

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト、新堂浩子です。

noteにフォーカルジストニアの方向けに、音楽家が取り入れやすい身体技法、ヨガ、アレクサンダーテクニーク、フェルデンクライス、野口体操を紹介しています。

こちらでは、身体技法ってナニ? 音楽家にどういいのか? ほかの身体技法を紹介します。

音楽家が取り入れる身体技法

身体技法とは

身体技法が普通の運動と違う点は、力を出したり角度を求めたりすせず、小さくゆっくり動くことが多いところです。

一般の運動であれば、力や角度、タイムを求めたり、人と競ったりします。

身体技法は、数値的な目標はなく、自分の体の状況や動きに目を向けることが目的です。

運動のようなわかりやすさや即効性がないため、わかりにくい、効果がないように感じる方もいらっしゃいます。

身体技法が音楽家にいい理由

身体技法は、ジストニアでなくても手が痛い人、奏法、姿勢、腰痛などに悩む音楽家におすすめです。

その理由を説明していきますよ。

 

普段の動き、姿勢や歩き、演奏での動きは、脚や指のことを考えなくても動かせます。

日常での動きや身につけた技術は、脳に運動のパターン、動くための神経プログラムがあるので、無意識に自動で動かせます。

自動で動けるおかげで、姿勢が悪い、手や腰が痛い、弾きづらくても、同じように動かしてしまいます。

自動で動いていると、脳の神経系は新しい回路を作り出しません。

 

自分の体や動きを意識することで、いつも通りに動いてしまう自動操縦から脱することができます。

脳の神経系は、新しい動きをしたり、新しく聴いたり触ったり感じたりすることで、新しい神経回路を作ります。

つまり、新しい動きを学びます。

この働きを脳の神経可塑性と言い、乳幼児期が一番活発ですが、近年、高齢者でも脳の神経可塑性があって学べることがわかりました。

>演奏の動きのコントロールも参照してね♪

ジストニア向け、神経学的なことはnoteに

もう一つの理由

身体技法をお勧めする理由は、もう一点あります。

瞑想の代わり(集中&リラックス)になります。

 

瞑想しようと、何も考えないでいることは、意外と誰でも難しいものです。

取り組んでは雑念が浮かんできて、「ダメだ、できない」と落ち込んだり、できない自分を批判してしまったりします。

リラックスどころか、辛い修行になってしまいます。

 

身体技法をするとき、自分の体の中に意識を向けます。

自分の体に意識を向けることで、集中、精神統一できます。

瞑想しようと苦行に何十分も時間を費やすよりは、身体技法ならやりやすいです。

常にあれこれ考えている頭を、自分の体、内側に向けることで、精神統一の効果があります。

動きをコントロールしているのは

姿勢が良くならない訳

例えば、立つ姿勢。

姿勢を良くしようと、頭を起こしたり背中などの筋肉を使って、形を直そうとします。

でも、大人はすぐに元通りになってしまいます。

 

私たちは、自分が意識できるところを良くしようとします。

実は、姿勢には、意識できないコントロールがたくさん働いています

視覚による情報、体を支えている足底の圧覚、体性感覚、内耳神経の平衡感覚(前庭感覚)など、感覚情報を使って立っています。

 

バレエ『ボレロ』の出だしでバレエダンサーが真っ暗な中、曲が始まるのを待っていますが、真っ直ぐ立つことが難しいと言います。

バレエダンサーですら、見えないと真っ直ぐ立ちづらい。

 

感覚情報は単一では身体状況は把握できず、いくつもの感覚を統合することで身体状態が認識できます。

例えば、人が片足立ちをしていて目をつむると、途端にバランスを崩して(脚の力が弱まり)、立っていられなくなります。

また、目を回したときも、前庭感覚だけでなく視覚もおかしくなり、脚の筋力が弱くなります。

 

感覚だけでなく、腹横筋というインナーマッスル(腹筋よりも深い、お腹の内臓周りにある深層筋)が、人が起きていると背骨に向かって収縮して体幹(胴体)を支えています。

(だから、寝た子や酔っ払ったお父さんは重い)

 

このように、立っているだけでも、体の外からの感覚、体内の体性感覚、重力(体の重み)、インナーマッスルなど、意識できない調節機構がたくさん働いています。

姿勢や動きを変えたいとき、意識できる触覚や筋肉よりも、意識できないコントロールを知る必要があります。

もっと詳しく読む >姿勢のコントロール

身体技法いろいろ

骨体操、ゆる体操、操体法

身体技法は、noteに紹介したヨガ、アレクサンダーテクニーク、フェルデンクライス、野口体操以外にも、色々あります。

・桐朋学園の矢野龍彦先生による「骨体操」は、ナンバの動き(同じ側の手足が動く)を取り入れた運動。Vi遠藤記代子先生による「ヴァイオリン骨体操」もある。

・高岡英夫さんの「ゆる体操」(本郷の教室に通いました)
・橋本敬三医師(1897-1993)による「操体法」
・イチロー選手がやっている小山裕史さんの「初動負荷理論」(柔軟性を上げようとジムに通いました)

これらは、書籍や動画もあるので、参考にされてください。

太極拳をされている音楽家もいらっしゃいます。

『ムジカノーヴァ7月号』に

ピアノ専門誌『ムジカノーヴァ7月号』(毎月20日発売、前号)

特集には「身体にやさしいピアノ奏法」ジストニアから学ぶ効率的な練習法、骨体操、御木本メソッド 。

私の本を紹介して頂きました。(P86、CD&BOOKページ)ありがたや~

身体技法の本来の目的は

どのメソッドを選ぶかは、自分がやってみたいもので構いません。

大事なことは、身体技法そのものが目的ではなく、演奏しやすくなる、動きや痛みを改善して、演奏技術が向上できることです。

気づかない力みがなく、自分の理想とする音を出しやすくなることです。

 

自分の体内に意識を集中して、リラックスすることが、新しい神経回路を作りやすくします。

手の問題であっても、体、全身から腕や指を使いやすくなったり、体がリラックスすることで、気づかない精神的な負担を軽くしたりできます。

 

本『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』の4章には、その場でできるやり方を載せています。

楽器の椅子でやるストレッチ、姿勢に目を向けたり、楽器でゆっくり動いたり、呼吸改善レッスンや自分でできるトラウマ療法などを載せています。


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

 

《ミュージシャンボディトレーナー新堂浩子》

ステージに上がる音楽家のためのフィジカルセラピスト

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衝撃だった五嶋みどりさんのコンサート https://www.music-body.com/blog/midori/ Wed, 29 Jun 2022 05:47:27 +0000 https://www.music-body.com/?p=12952 6/16、みどりさんのコンサート@王子ホールに行きました。

銀座三越の奥にある、王子製紙の王子ホールディングスビルの2F。

2階なら、と階段で上がったら、4階分くらいあった。

チケットの席に座って、荷物を全部床に置く。

なぜなら、20年くらい前、佐藤陽子さんのコンサートで事件を起こしたから。

 

次の曲が始まる前、静まった一瞬、

「パタッ!」

 

私の傘が床に落ちた音………><

次の瞬間、佐藤陽子さんの首が、前列端に座っていた私の方へグリっと向いたのでした。

大きなまなこを開いた佐藤さんの顔。。

以来、コンサートではすべてを床に置くようになりました。

 

五嶋みどりさんのコンサートは衝撃でした。

本物のクラッシック、本物の芸術…

終わって感無量で涙が溢れました。

隣りにいた方も泣かれていました。

 

本物のクラッシック、芸術とは、クラッシック作品を一流の演奏家が弾く音楽という意味もありますが、CDや再生機を通して聴く音楽ではなく、弦楽器の響きをアンプを通さず肌で感じたという意味です。

 

帰りはスマホを見ず、本を読む気も起きず、煩悩を消し去られたような感じで、その日も翌日も何も聴きませんでした。

フルトヴェングラー指揮の演奏を聴いた人はみんな衝撃を受けたそうですが、こんな感じだったのかな。

 

演目はラフマニノフとラヴェル。

みどりさんとオーストラリア人のVi、米人のヴィオラ、カナダ人のチェロのカルテット。

大小の4つの飴色の木の箱からの響きに、耳からだけでなく振動に包まれる体験は、ホールコンサートだからこそ味わえるもの。

 

演奏の何がどうだったかは、曲に無知なのと、私の表現力を通り越しているのとで書けません。

作曲者と演奏者の高い感性や芸術性が、音に表れているのでしょう。

 

ミュージックシェアリングとは、’92年にみどりさんが立ち上げたみどり教育財団のことで、認定NPO法人。

若手の音楽家に社会貢献の場を与え、特別支援学校、高齢者施設、病院で演奏したり、アジアの開発途上地域で活動したりされています。

 

今回のコンサートは活動報告コンサートで、20周年だそうです。

地味なワンピースに、口紅以外はノーメイクのみどりさんは、同時通訳も。

 

心に残ったのは、「なぜ、みどりさんはあんなに人々の中に入っていけるのか?」という問いに、「あなたは一人ではないのですよ、ということを音楽で伝えられるから」。

 

パンフレットにある写真で、日本の盲特別支援学校で子どもたちの前で膝まづいてViを弾くみどりさん。

どんな気持ちで弾いて、その音は見えない子どもたちにどんな風に響いたのだろう。

 

世界的ヴァイオリニストでアジア人であるみどりさんが、自分がやりたいこと、自分の使命を果たされているのだと思います。

▶Music Sharing ミュージック・シェアリング
支援(募金)、楽器指導プログラムなど。


『演奏不安・ジストニアよ、さようなら 音楽家のための神経学』

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