音楽家のジストニア、手術しなくてもなおります

ピアノやギター、ベース、管楽器で指を思うように動かせなくない…

ジストニアって、なおらない難病?弾けなくなるのか??

ジストニアになると演奏を続けられなくなる、そんな記述も目にします。

むずかしい医学的な言葉は避けて、音楽家の方がなるべくわかりやすいように書きますね。

演奏家のフォーカル・ジストニアとは

ピアノやギター、ベース、サックスなどの演奏で、意に反して決まった指が思うように動かない、演奏している時に指が勝手に動いてしまいます。

歌や管楽器で口を動かせなくなったり、ドラムの足を動かせなくなる人もいます。

ジストニアの症状

初期症状として、アーティキュレーションのちょっとした不安定さ、動きの抵抗感、わずかに突っ張る感じ、動かしづらさなど。

進行していくと、適度の指の屈曲や顔面筋などをコントロールできないようになってきます。

この時点で、おかしい、練習不足ではないとわかります。

 

指がすばやく反応しなくなった、指が内側に曲がったまま伸びず次の音にいけないなど、

手、前腕、顔、首などの筋緊張が起こることもあります。

特徴的な症状は、演奏中ある特定の動作を行うときのみ症状が現れる、楽器を持たずに行うとできる割合は非常に高いです。

ー『Musician’s Dystoniaどうして弾けなくなるの?』音楽之友社 P16~18より

 

音楽家以外にも書家におこる書痙、画家などにも起こるので、職業性クランプ(痙攣)とも言われます。

ジストニアの原因、病理

今のところは、運動をコントロールするための脳の許容量に問題がおきている、許容オーバーという見方が有力です。

 

特定の動きを繰り返して練習すると、脳から手へ命令する回路ができて脳内で動きをコントロールする回路、マップができ拡がります。

さらに練習していくと、脳内のマップが整理されて、動きのプログラム化が進みます。

このプログラムによって、考えなくても動かせる、プレイができます。

 

でも、あまりに反復練習しすぎると、高度に発展しすぎたプログラムを同時に起動させようとして、脳が許容オーバーでフリーズしてしまった状態ということです。

 

サルの実験結果では、本来なら一本の指に該当する脳の範囲が膨張しすぎ、複数の指まで飲み込んでしまっていた、

隣の指とくっついてしまったような状態だったそうです。

 

また、ジストニアのピアニストの脳では、その指の周りの筋肉だけでなく、より離れた指の神経までも活性化していることがわかったそうです。

(ミュンスター大学カーリン・ローゼンクランツ博士ら)

 

指の筋肉を動かす脳の回路、中枢神経の活性化メカニズムから筋肉への命令がこんがらがっている。

ー『Musician’s Dystoniaどうして弾けなくなるの?』音楽之友社 P63~より

 

指の不随意な動きについては、筋肉と脳神経の専門的な分析になるので、ここでは省きます。

ジストニアかどうか

診断は難しい

音楽家専門の整形外科医でもジストニアの診断は難しいです。

指は元々つられやすいところなので、他の指が伸びたり巻き込んだりしやすいです。

人によっては、元から腱がつながっている場合もあります。

心の負担がよくない

動きがおかしかったら、ジストニアかもしれないけど、そうじゃないかもしれません。

腱鞘炎でも何でも、境界域があります。

診断をしなくていいと言っているのでは決してありません。(リウマチなど、他の疾患の可能性もあります。)

 

わからないのに、決めつけて悲観したりむだに不安を大きくして、心の負担を大きくしてしまうことがよくありません。

統計的にジストニアになった人は、他の人に比べて練習時間が長いことが明らかで、練習しすぎることと関連があります。

 

真面目でストイックに練習する、そういう気質ゆえに動きを分析的に理解しようとするとするほどに悩みが大きくなります。

問題は身体的なものではないから、葛藤は大きくなります。

ジストニアかもしれないと思ったら 

がんばらないことです。

「もっと練習しなくては」と考えて、演奏できない部分を強迫的に反復することで、ときに動作の障害を固定します。

その部分ばかり意識し心理的にも強化して、無理強いをして症状を進めてしまいます。

 

問題は指にはないので、残念なことに、がんばって練習する努力は失敗します。

自分に対する怒りやいらだちで、心理的にフラストレーションがたまります。

 

意識的に動かそうとするほど腕の筋肉はかたくなり、問題は悪化します。

がんばっては自信をなくすという悪循環にはまります。

アスリートのイップス

ゴルファーがパターを振れなくなったり、野球選手が普通に投球できなくなる、弓道で矢を射ろうとしても指が離れないなど、それまでできていた動作ができなくなることを「イップス」と呼びます。

スポーツでは、緊張しすぎて動けなくなったりミスをするので、心理的なものと考えられていました。

 

しかし最近イップスが、練習に練習を重ねたゆえに起こるジストニアではないか、と考えられています

脳を鍛えすぎたための“神経の混線”なら、糸をほぐすように、動き方を変えることでイップスを防げます。

変形パターを使ってフォームを変えたり、手の形や動き方を変えることで、負のサイクルから抜け出しています。

ジストニアの治療法

局所療法

ボツリヌス菌毒素注射、投薬治療(抗てんかん薬やパーキンソン病などの薬)、シーネ(装具)で指の動きを抑えるなどが代表的。

局所での対処の効果は、一時的なもの。

問題が起きているのは局所ではなく脳です。

手術療法

脳外科手術による熱凝固や電気刺激ー東京女子医大脳神経外科

手術しないでなおせる

ジストニアは、手術でなくてもなおせます。

手術を薦めない理由として、手術そのもの、術後の痛みや体力の低下、術後動かせない挫折感など体や心の傷が、さらなるトラウマとなり得るからです。

動きを新しく作る

スポーツ選手が動き方を変えてイップスから抜け出したように、動き方を変えてジストニアを起こさなくなることができます。

 

ゆっくりと穏やかな動きをすることで、神経回路を新しく作っていきます。

感覚神経と運動神経は別々ですが、感覚によって運動を調性してコントロールします。

小さな刺激は感受性を劇的に向上させ、やがては体の動きの変化へと繋がります。

 

これは、鉄の棒を持っているときには、ハエがそこに止まったのを感じることができません。

でも、持っているのが羽なら、それがわかります。

何の感覚においても、元の刺激が大きいと変化がわかりませんが、刺激がもともと小さいとわずかな変化がわかります。

 

感覚とは、触覚だけでなく体性感覚(筋肉や関節の動き具合)、聴覚などすべての感覚です。

ゆっくり動いて、それに注意を払うように集中していれば、その部位の神経回路は洗練されていきます。

感覚の差の感受性が上がり、微妙なコントロールが可能になり、新しく動きを学習します。

 

ごく小さな感覚の差を読み取れることで、動きのコントロールが可能になりますが、急速な動きは学習を妨げます

急速な動きこそが脳の回路を融合させ、ジストニアへと見舞わせます。

 

音楽の練習は、無意識に手が動いていけるようになるのが目的です。

気持ちはわかるのですが、意識的にトレーニング的に動かしては、動きのプログラムを良くないものにしてしまいます。

 

無理にやろう、矯正しようとしたりダメだと否定的な考えをすると、ストレスになり、心身共かたい状態は学習を妨げます。

なめらかに感じられるようなったり、神経系と脳を発達させて、時間をかけて新しく組織化することです。

神経可塑性

以前は、先天的や外傷、脳出血などで認知や痙攣性の動き、考えたり動きがコントロールできないともう回復しないと言われてきました。

今は従来のリハビリでなく、脳が特殊な光、音、また動きや触覚など、 “感覚”によって感覚ニューロンを活性化して動きを取り戻せる、これを“神経可塑性”と言います。

神経科学者マイケル・マーゼニックも、「注意を集中している時に神経可塑性による長期的変化がもっとも生じる」としています。

 

例えば、脳疾患による突っ張った筋肉は、筋肉が激しく収縮していて、収縮を抑える脳のニューロンが損なわれると考えられています。

神経系の調節がうまくいかないとき、前とは違うニューロンで脳の再配線をして、コントロールができるようになります。

 

実際、赤ちゃんは、音の方を見たり触ったり口に入れたり、歩こうとして転んで痛い目にあったりして、発達していきます。

人は、いろんな感覚の入力や動くことで、脳が発達したり動けるようになります。

 

身体指導のフェルデンクライスは、

脳が使われることは、運動、思考、感覚、感情の4つ全部が作用している。

力の行使は、気づきと対立する。無理に何かをしているときに学習は生じない。

無理な努力は無分別で自動的な動作を生み、やがてそれが習慣化して状況への変化への柔軟な反応が失われる。

無理強いすることで得られるのは、解決策でなく、さらなる問題である。

ー『脳はいかに治癒をもたらすか』紀伊国屋書店P272より

 

アレクサンダーテクニーク系の本『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』春秋社 にもジストニアはこう書かれています。

運動パターンを変化させたときに、症状が劇的に良くなり得るのです。

トレーニングを延々と続けてもほとんど改善がみられなかったのに、自分のテクニックを一から見直すことでジストニアの症状を改善させたピアニストもいます。

粘り強く気を抜かずに注意すること、時間、そして知識を持った教師の協力が必要です。

この方法は一貫して成功を収め続けています。

心と体と脳

心と体は分けることができません。

私たちは、心と体は別のものとした考え方をするので、意外に感じてしまいます。

ステージなど精神的に緊張するから、体が興奮したり頭が混乱します。

 

心のストレスが大きくなると、体の症状が悪化することもあります。

一般の人でも、嫌なことがあると朝、起きれなくて仕事や学校に行けなかったり、悪化すれば鬱になって、どんよりとした顔になります。

心と体と脳、互いに大きく影響します。

 

プラセボ効果ってご存知ですよね?

本当は効果がないものを「これを飲むと治りますよ」と言われて飲むと、実際に効く、症状が軽くなります。

これは、思考することで神経を変えたという神経可塑性です。

「プラセボ効果の基盤をなす脳の神経回路を系統的に活性化できれば、劇的な医学的進歩ができる」と主張する科学者もいます。

 

ただ、心の持ちようだとかホリスティック医療がいいと言いたいのではありません。

動きばかり問題にしがちですが、感覚が大事、心も思考も大事です。

 

ジストニアになる人は心の負担から、症状を悪化させてしまうことがよくないです。

なおらないことなんてありません。

神経可塑性で脳は、動きは、変わります。

奏法の改善


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「思い通りに奏でやすい訳 〜音楽家が痛めない秘訣」

《ミュージシャンボディトレーナー進藤浩子》

音を出しやすい体づくりと、それぞれの方の本質を引き出して

音楽家としてステージをアップさせていくパーソナルトレーナーをしています。

長年医療に従事したのち、音楽家専門のパーソナルトレーナーに。

バイオリン、ピアノ、トランペット、アコギ歴。

趣味は、英会話と大人から始めたクラッシックバレエ♪

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