ジストニア、あがりを克服できないステージ恐怖症

何度かステージに立っていても、あがりが克服できないステージ恐怖症。

恐怖心、体や手がかたまる、失敗を繰り返す不安、頭の混乱を起こしてしまいます。

 

ジストニアは、中枢神経系の障害による不随意な収縮にかかわる運動障害とされています。

神経の混線によって、指などの簡単な動きができなくなります。

 

海外では、舞台俳優やアスリートがプレッシャー、批評など積み重なった心理的な傷からトラウマとなり、恐怖症やイップスを招くとされています。

アスリートやダンサーの場合、試合や舞台、故障による痛みなど体の傷みが心理的にトラウマを大きくし、慣れた簡単な動きができなくなります。

そしてトラウマを治療することで、イップスの動きが改善されています。

 

私がこれまでジストニアでご相談いただいた方は、20歳の男性か、30歳以上の男女かに分かれます。

20歳男性はほとんどが学生なのに対して、30歳以上の方は真面目なプロの方かストイックな練習をされた方です。

初心者やストイックな練習をする人は、ただでさえつられやすい指が同じ動きを反復しすぎることで、つられて動くようになってしまったのかもしれません。

 

音楽をしていく上で、人目にさられるプレッシャーや失敗など、心理的に大きな負担がかかります。

ジストニア、ステージ恐怖症の場合、できるはずの演奏ができない、頑張っても効果が出ません。

それが音楽家にとって、さらなる心理的負担となります。

症状そのものが問題を悪化させ、最悪の場合、音楽を諦めてしまいます。

脳に蓄積される傷み

闘争、逃走、かたまる

人には動物として生存するために、非常時に「闘うか逃げる」という反応をします。

生命の脅威があると、思考なく体は闘う逃げるに備えます。

 

人前で歌ったり演奏する前に普通、緊張します。

心拍は増加し、筋肉はかたくなって、呼吸は速くなります。

あがりながらも人前に出る回数を重ねることで、多くは徐々に慣れていきます。(脱感作)

 

もし、闘うか逃げるかできなければ動物は凍りつき、捕らわれて食べられそうな時はフリーズ、かたまります。

これは肉食動物は、死んでいる動物を食べたがらないので仮死状態になり、万が一食べられても苦しまなくてすむための本能的な反応です。

 

命の脅威の敵が去ってしまうと、動物なら元に戻って生活できます。

でも、人間は違います。

閉じ込められた傷

動物と違って人間の場合、危機的な体験を即座に冷凍保存します。

人は脅威的な体験を脳で処理できず、体や心の大きな痛みを脳に閉じ込めてしまいます。

 

通常の体験は、いいこともよくないことも、脳で処理して記憶します。

でも、極度に心理的にネガティブな体験の場合、脳で処理できず未処理のまま閉じ込めます。

 

震災や事故にあったり目撃した人が、PTSD(心的外傷後症候群)になることがあります。

そのあとにフラッシュバック、体がかたまる、思考の混乱、恐怖感などの症状に襲われます。

 

音楽家の場合、きっかけとなる出来事やトラウマそのものが原因ではなく、感情的、身体的な痛みが脳の中に蓄積されていって、ステージ後や何年か経ってから起きます。

例えばステージなどでミスしたなど強くネガティブな体験を、視覚、聴覚や身体感覚を含めて、感情とともに脳に閉じ込めてしまいます。

思い出させるようなシーンや照明、音、動作や感情などによって、脳に保存されているものと同じ不安感、恐怖を誘発します。

 

ステージでの強い不安、体や手のかたまり、頭の混乱、逃避など演奏を邪魔するのは、無意識に蓄えられたネガティブな体験からくる症状です。

体の緊張や不安、ネガティブな思考があることはわかりますが、自分の症状と過去のトラウマ的な体験との繋がりは無自覚です。

身体的、心理的なトラウマ

音楽にまつわることだけでなく、極度にネガティブな感情を帯びた出来事は、脳に閉じ込めます。

身体的、精神的にひどくネガティブなことは、子供時代から本人の臨界域に達するまで無意識に蓄積されていきます。

・子供時代の出来事
・身内の死や親の離婚
・事故に遭ったり目撃した経験
・自然災害

・屈辱感、不合格、自信の喪失
・大きな怪我や痛み、手術
・故障による恐怖、強い喪失感
・練習できないことのストレス
・自己アイデンティティの崩れ
・失敗や故障に理解を示さない親、指導者の態度

未解決のトラウマは長年のうち積み重なっていき、身体的、感情的に混乱した体験を解決しにくくします。

いつどのように起こるかは、個人史、気質や出来事の大きさなど様々な要素が関わります。

あがりが克服できない人のトラウマ的な症状

不安が強いあまりに、リラックスや集中することができず、手や思考のコントロールができなくなります。

・不安感 最中にずっと不安。

正確に自分が何について不安を感じているのがわかる、または不安がどこから来るか全く説明できない。

 

予期不安

「また〜するんじゃないか」と以前起きたネガティブな出来事が起きそうで怖い。

 

パニック発作

不安が強度で恐怖心、呼吸が苦しい、胸の痛み。活動をやめたくなる。

 

回避行動

動揺した体験と同じことや思い出させることを避けようとする。

強い不安を伴うことが多い。

無意識のうちに病気、具合が悪くなるなど、参加できなくなる。

 

解離状態

長年のうちに身についた動きが突然できない。

体や手、思考が分離、麻痺する感覚。

一般のトラウマに苦しむ人に顕著な症状で、反復する身体的な障害に顕著な症状。

 

混乱状態

頭が働かず、わけがわからない、集中できない。

不安感や解離からつながったもの。

 

身体感覚の過剰意識

手指など問題のある部分の感覚の過剰意識。

問題のある指などに意識が大きく、緊張があって自然な動きができない。

 

自分に対するネガティブ思考と自己卑下

過剰にネガティブな思考とセルフトーク。

継続することで考えが歪み、歪んだ考えで自分を苦しめる。

いいパフォーマンスをしなければと思っているから「自分なんてダメ、落ちこぼれだ」と浴びせる。

 

体がかたまる 筋肉の緊張。

問題の箇所にある場合もあれば、体に感じられることも。

ウォーミングアップしても体をほぐせない。

がんばると悪循環

症状が問題を悪化させる

練習して克服しよう、より頑張ることで問題は循環します。

プレッシャーや思うように動かせないストレスを抱え、早くよくなりたいと考えます。

がんばって動きを改善しようといしても、問題は動きの中にはないのでよくなることはありません。

 

弾けない自分を責め自己嫌悪に陥り、ただでさえ傷ついている自分に腹立ちます。

熱心な音楽家の特性によって助長して、がんばっては自信をなくすという悪循環にはまります。

完璧主義や競争心

自分がミスをすることを許せない完璧主義や、過剰な競争心は足を引っ張ります。

コンクールやオーディションで他人に意識が行けば行くほど、自信を失くし、自分へ集中できなくなります。

 

完璧主義の人は、真摯であるがゆえに熱心に練習に取り組み、優れた成果を出します。

でも、ミスを許せないことは向上や回復に問題となります。

人間である以上、完璧であることはありえません。

 

完璧主義だと失敗に対する抵抗感で失敗を受け入れられず、自分に怒りや厳しい評価を向けてしまいます。

失敗や負けを受け入れられないと、そこからフィードバックを生かせません。

失敗は避けられないもの、失敗からより良い結果を出すために学びを得ることができます。

 

ジストニアの方が完璧主義だと、少しずつつ積み重ねる進歩を見えなくしてしまって「まだできない」と解釈してしまいます。

改善で少しづつの進歩でも、何も変わらない思い込みを持つと滞ってしまいます。

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